第二百四十二話 淡路からその六
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「いや、ねねが働いてくれました」
「ははは、御主ずっと子が欲しいと言っておったからな」
「それがしおなごは好きですが」
実は織田家きっての女たらしでもある、羽柴は猿面であるがその人懐っこさと愛嬌で男も女もたらしこんでしまうのだ。それで女にももてるのだ。
「しかし子が出来ませんで」
「それがじゃな」
「遂に出来ました」
「それも二人な」
「去年は捨、そしてです」
「今年もじゃな」
「拾も出来ました」
その彼もというのだ。
「有り難いことに」
「そのことがじゃな」
「実によかったです」
幸せに満ちた顔での言葉だった。
「全く以てそれがしは果報者です」
「そうじゃな」
「ではです」
さらに言う羽柴だった。
「それがしも母上とねね、子達の為に」
「勝ってじゃな」
「帰ります」
「褒美を稼ぐか」
「ですな、次の褒美で」
羽柴jは笑ったまま信長に応えて言った。
「母上にまた服を買いまする」
「それが褒美であったらどうする」
「それではそのままです」
母にというのだ。
「差し上げまする」
「ははは、猿の親孝行は変わらぬな」
「何しろそれがしを育ててくれましたから」
それ故にというのだ。
「当然です」
「そうか、やはり親は大事にせねばな」
ここでだ、信長は真顔になって述べた。
「ならんな」
「ですな、まことに」
「わしもな」
少しだ、信長は遠い目になって述べた。
「戦が終われば父上の墓参りもして」
「そしてですか」
「母上にも顔を出すか」
自身の生母にもというのだ。
「そうするか」
「それはよいことですな」
「近頃忙しくどちらもしていなかった」
父への墓参りも母に顔を出すこともいうのだ。
「それをしてくる」
「では」
「うむ、そうしてくる」
こう言うのだった。
「戦が終わった後でな」
「それはよいことです」
「では上様、戦の後は」
「是非共」
他の家臣達も応える、そしてだった。
天下の精鋭達は屋島に向かって進んでいた、そのうえで。
その中でだ、信長は食事も摂った、やはり急ぎつつだが。
干し飯を食いつつだ、彼は周りに言った。
「今はじゃ」
「はい、こうした飯をですな」
「急いで食い」
「力を養う」
「それが先決ですな」
「美味い飯は後じゃ」
戦の後だというのだ。
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