第二百四十二話 淡路からその一
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第二百四十二話 淡路から
姫路に入った信長はその白鷺を思わせる見事な天守の中に入りだ、その頂上に登りそこからだった。屋島の方を見て言った。
「ではじゃ」
「はい、いよいよですな」
「屋島に兵を向け」
「そのうえで、ですな」
「屋島の軍勢はどれ位じゃ」
信長は己の後ろにいる家臣達に問うた。
「一体」
「二万とのことです」
すぐにだ、三好秀次が答えた。秀吉の甥であり今は三好家を継ぎ三人衆も従えている彼がだ。
「そのうえで我等を待ち伏せております」
「二万は出ておるが」
「はい、おそらく伏兵がいますな」
秀次も言う、叔父にはあまり似ていない比較的整った顔で。
「辺りに」
「そうじゃな、しかしな」
「伏兵がいてもですな」
「屋島には水軍がおってもな」
それでもというのだ。
「主力はおらぬ」
「そうですか」
「うむ、主力は他におってじゃ」
そしてというのだ。
「我等が屋島に兵を多く向けて姫路の守りを薄くするとな」
「そこからですか」
「姫路城を攻めて来るわ」
まさにこの城をというのだ。
「一気にな」
「そうしてきますか」
「この城を攻め落とさせるつもりはないが」
しかしと言うのだった、信長は。
「攻めさせるつもりもない」
「では」
「精兵を選び水軍で一気に姫路からじゃ」
まさにというのだ。
「主な将達が率いて屋島に向かいじゃ」
「そのうえで」
「その二万の敵を一気に攻めるぞ」
強い声でだ、信長は言った。
「よいな、今からすぐにじゃ」
「今は夜ですが」
「夜でもじゃ」
それでもとだ、信長は秀次にすぐに返した。
「一気にじゃ」
「兵を屋島まで進め」
「そして」
「屋島の魔界衆を討つ」
そうするとだ、信長は言った。
「よいな」
「そうされますか」
「精兵を率いて素早く行く」
大勢で行くとどうしても足が遅くなる、しかし少数の精兵達を率いて一気に敵を攻めてというのだ。
「では多くの兵は」
「ここに残す」
四十万の大軍のうちの殆どはというのだ。
「そうしてじゃ」
「僅かな兵で一気に攻め」
「勝ちますか」
「そうする、では行くぞ」
こう言ってだ、信長は。
すぐに精兵一万とだ、主な将帥達だけを率いて姫路から密かに港を出てだった。夜のうちに海を進んだ。
その夜の瀬戸内を進みつつだ、信長は水軍を率いている九鬼に言った。
「あの者達は夜目が効く」
「だからですな」
「気付かれぬ様にじゃ」
「はい、淡路の東を通り」
「そしてじゃ」
「四国に渡り」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
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