巻ノ二十九 従か戦かその四
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「命を奪うつもりはない」
「家臣としますか」
「御主達の中に入れる」
「そうされますか」
「そうしたい、だからな」
「戦に勝てば」
「くれぐれも無益な殺生はするな」
家康は鳥居にこうも言った。
「いつも言っておるがな」
「はい、その地の民は我等の民となりますし」
「田畑も同じじゃ」
「荒らすことなく」
「必要な戦だけをせよ」
家康は実際に無益な殺生を忌み嫌う、必要な時は仕方ないにしてもそうした時以外は自身にも家臣達にも殺生を戒めているのだ。
そして狼藉についてもだ、彼は言った。
「狼藉をした者は罰する」
「それも重く」
「打ち首も覚悟せよ」
「承知しております、さすれば」
「上田を攻める時は御主に任せる」
その鳥居にとだ、家康は確かな声で告げた。
「兵は七千あればよいか」
「上田は大体二千か三千ですか」
「十万、二千五百じゃな」
十万石だからというのだ。
「それ位じゃな、浪人を雇ってもな」
「三千というところですか」
「それ位であろう」
これが家康の見立てだった。
「民達からも雇っても精々五千じゃ」
「それだけですか」
「それならば七千じゃ」
こちらが出す兵はというのだ。
「その七千の兵で攻めてじゃ」
「真田家を負かす」
「そうするのじゃ、よいな」
「畏まりました」
鳥居は家康に強い声で応えた、こうして戦の時は決まった。そしてその家康に対して家臣達の中から一人の僧侶が言って来た。
「殿、それでなのですが」
「天海か。どうしたのじゃ」
「はい、南の空で動きがありました」
「南のか」
「九州の方で」
「九州か、あそこでは確か」
九州の話を聞いてだ、家康は言った。
「近頃島津家が力をつけていますな」
「どうやらその島津家がです」
「また戦で勝ったか」
「大友家も龍造寺家も破り」
「そしてか」
「このままいけば九州を手に入れるやも知れませぬ」
「強いのう」
家康は天海の話を聞いて瞑目する様にして言った。
「兵も強いが」
「四兄弟がです」
「島津家のな」
「相当に強く」
「それでじゃな」
「他の家を圧倒しております」
九州の他の大名家をというのだ。
「ですから」
「あと数年もすればじゃな」
「九州は島津家のものとなるでしょう、そしてみちのくですが」
「あちらでもか」
「一つの星の輝きが増しております」
「その星は誰の星じゃ」
「おそらく伊達家の」
この家の、というのだ。
「主である政宗殿かと」
「あの御仁の話もよく聞くな」92
「はい、みちのくの地においてです」
「他の家を圧しておるか」
「このままいけばみちのくを手中に収めるか」
「関東に入るか」
「そうなるかと」
天海は東北の伊達家の話もす
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