第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
ヒルゼン
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だから例え後悔や、死や、犠牲のことに涙を流し、昨日を悔い、無力な己を呪ったとしても。
今日と、明日と、続く未来の喜びや、愛や、幸せのために歩き続けることが、出来るから。
きっとどの火影だって過ちを犯し、悩んだことはあったかもしれない。
でも最期まで木ノ葉を幸せにしようと、木ノ葉を守り続けようと頑張ってきた、彼らの。
その意志を受け継いだ、自分は。
自分が。
「この男が! 三代目火影じゃ!!」
――だから木ノ葉は。
自分が守らなくては、ならない。
「封印術・屍鬼封尽!!」
そして発動される、三代目火影最期の術。
猿飛ヒルゼンは飛び出していった。木ノ葉を守るために。
自分の体を突き抜けて出てくる、死神の、そしてジャシンの呪われた手が初代と二代目の魂をそれぞれ掴んだ。死と血と滅亡を何よりも愛するジャシンの顔が喜悦に歪む。
「千手柱間と千手扉間……その死を二度も手に入れられることに、誰かは笑いがとまらない……!」
そんな狂気じみた笑い声を立てる契約対象たる死神の言葉すらもう耳に入らない三代目は。
魂を持っていかれる寸前の初代と二代目が微笑むのを見て、僅かに救われたような気がした。
分解していく塵芥。その下に現れたのは二名の死体だ。
初代火影の形を成していたはずのそれは、長い黒髪の少女――音隠れのキンに。二代目火影の形を成していたはずのそれは、雨降り小僧のクゥに。何れも大蛇丸の部下だったであろう二人の死体に、三代目は打ちひしがれる想いだった。
「この者達は……お前を信じてきていたのではないのか……っ!」
大蛇丸を信じて。ここまでついてきたはずの子供を。何故そうあっさり殺せるものなのだろうか。何故穢土転生の生贄に出来るものなのだろうか。
「あら、私も不本意なんですよ、先生。本当は片腕を失った二人組にしようと思ったんですけどねえ……でも何しろ二人が消えていたものだから。呪印に適合できたカイナとミソラは捨てがたいし……尾獣チャクラを抑止できるケイは勿論捨てられないもの。能力としてはドスとカイの方がキンとクゥよりも上だったってだけですよ」
その大蛇丸の言葉に更に絶句させられる。
片腕を失った二人。それはザクと、いつぞやの任務の報告書の中で語られていたサンカという少女に違いあるまい。その二人とて大蛇丸の為に戦い、そしてその戦いの上で片腕を失ったのではないのだろうか。
なのに大蛇丸は。彼に従ってきていた沢山の子供たちを天秤に乗せ。能力の高さや、呪印に適合したかどうかや、持っている能力やらで二人の子供を迷わず切り捨てたというのだろうか。
こんな人外が自分の弟子であったことが無念でしかなく、そしてあの時彼を殺せなかった自分を恥じるばかりだ。
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