Epilogue -エピローグ-
Returnees
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いるかもしれねえVRMMOなんざ、二度とやるか」と言い捨てていた。私も全くの同意見なんだけど……それがフラグだと思ってしまうのはただの気のせいなんだろうか。
まあ、その辺はさておいて。
私は石碑を見つめながら、死した茅場へと思いを巡らせていた。一万人を自身の世界に閉じ込め、三千もの命を奪い、結局一護に敗れて死んだあの科学者は、今頃地獄の底で、何を考えているのだろうか。
私たちに殴られ、一護にキレられた後に発せられた台詞からも、私以上の無表情からも、感情の起伏を読み取ることは、終ぞできなかった。果たして、自分のエゴを貫いたことに後悔や反省の念を抱いているのか、あるいは言葉の通りに後悔なく死んでいったのか。
別に知ったところでどうともならないけど、でも、少しでも慚愧の念があったのなら、死んでいった三千人とその親族にとって、雨粒程の救いにはなるのでは――。
「――茅場には、後悔の念なんざ一欠片もなかったさ」
心を、読まれたかと思った。
見上げると、一護が少しだけ細めた目で石碑を見やっているのが見えた。悲哀、憐憫、憤怒、寂寥。どれでもないような陰の感情の色が映るブラウンの瞳が、静かに黒い碑の文字列を捉えている。
内心の驚きを隠しながら、私は一護に問いかけた。
「どうして、そう思うの?」
「あの七十五層のボスの部屋で、俺は初めて茅場と戦い、剣を合わせた。時間は短かったけど、でもその間にアイツの剣に触れることができた。そん中で、今まで全然分かんなかった茅場の感情が、刃を通じて少しだけ流れ込んできたんだ。
……アイツの剣には、ただ幸福しかなかった。
表面上は鉄面皮なんて気取ってやがっても、剣は俺にただひたすらに満たされた気持ちを伝えてきたんだ。この世界を創り上げたこと、それに抗うたくさんの人たちがいたこと、そんで、俺とああやって戦えたこと。その全てに、茅場は満足してたんだ。
だから、最期に言ってたことに、多分嘘はねえ。アイツにとっては、自分の世界が出来上がってそれを越えていく存在を見れたことが全てだったんだ」
「……そう」
自分の声が暗くなるのを自覚しながら、私は相槌を返した。呼応するように秋風が丘の頂上を吹き抜け、私の項を冷たく撫でていく。
一護はその風を気にすることもなく、ただ秋晴れの蒼天を見上げて、言葉を続けた。
「俺は今でも納得してねえし、そもそも理解もできてねえ。けど最近は、少しだけ、奴の思ってたことが分かったような気がしてんだ。
アイツがずっとあの世界を作ることを欲して生きてきたなら、茅場はきっと、あの世界の実在を心のどっかで信じてたんじゃねえかと思う。『ソードアート・オンライン』の舞台じゃなく、現実に存在する、剣と戦いでできた鋼鉄の城として。
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