Epilogue -エピローグ-
Returnees
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と判断して、俺は店に備え付けられた紙袋を使って余ったパンを持ち帰っていた。あのままいたんじゃ、確実に第二ラウンドが勃発してたからな。
……ってことを話ついでにチャドに説明すると、横で聞いていたキリトが苦笑して、
「それ、確実に一護が悪いよな」
「私もそう思うかな」
「俺かよ!? コイツらが勝手に空気悪くしたんだぞ!? 俺のドコに非があるってンだよ!」
「男なら言い訳しないの」
「……一護、今回ばかりは、お前が悪い。もう少し、女性に気を遣った方がいいと思うぞ」
「素晴らしい。貴方は話が分かる人」
「なんでソコで結託してんだよ!? 会って一分でその団結力はおかしいだろうが!!」
互いにサムズアップを交わすリーナとチャド。井上と会った時みたいな警戒心とか空気の悪さは微塵もない。ますます意味が分かんねえよ!
晴れ渡った空の下で、俺は一人、頭を抱えることになった。
◆
<Lina>
下で待ってるから、という彼らと別れて歩くことしばし、私たちは目的地である丘の上へとたどり着いた。
短い芝が生えたそこには、黒々とした大きな石碑が鎮座していた。
かつて第一層「はじまりの街」にあった『生命の碑』に似たそれには、SAO事件の犠牲者である約三千人の名前が刻まれている。右半分はアバター名、左半分が実名になっているため、各プレイヤーの本名までは分からない。
「……知ってる名前、ある?」
傍らに立つ一護に問いかけると、彼は数秒の沈黙の後、「ああ」と短く言葉を返した。「他人の名前を覚えるのが苦手なくせに、よく忘れなかったね」と茶化すことはしない。彼が見知った人間の死を忘れてしまうような薄情な人間じゃないことは、共に過ごした長い年月の中で十分以上に理解していた。
それぞれで用意した花束をそっと供え、私たちは黙祷を捧げた。私が知る人、知らない人に、等しい安息を願って。
数分の閉目の後に目を開け、石碑に刻まれた名前の羅列を眺めていると、ふとあることに気づいた。
アルファベット順に並ぶアバター名のHの列、そこにはあのヒースクリフの名は記されていなかった。最後の一護とのデュエルに敗れ、現実世界でも死んでいたはずのあの科学者の名は、犠牲者としては数えられていないようだった。
あの日、SAOの世界崩壊と同時に、茅場は死んでいたらしい。自身の脳に大出力のスキャニングを行う、つまり、自分の意識のコピーを試みることで自殺したそうだ。情報をくれたキリト曰く、確率は千分の一もなかったとのこと。しかし、結果的にそれは成功したらしく、茅場の意識の複製は今も電脳の中に生き続けている、ということになる。
それを知った一護はげんなりした顔で茅場のしぶとさを愚痴り、「ヤツの複製が
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