Epilogue -エピローグ-
Returnees
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合わせることは無かった。代わりにチャドから送られてきた幸運のお守りみてえなモノはありがたくもらっておいたが、石田から届いた全文ドイツ語オンリーのエアメールは読まずに捨てた。どんな嫌がらせだよあのクソメガネ。
そんなこんなで二月中ごろには俺は退院できてたんだが、リーナの方はそうはいかなかった。
元々病弱で身体が弱ってたっつうこともあり、車椅子での外出許可が下りるのさえ、四か月以上掛かった。食欲だけは相変わらずで、俺が見舞いに行く度に病院食のボリュームの無さにブーブー文句を言ってたが、それでも一応ベッドの上で大人しく養生してたらしく、ゆっくりとだが確実に快方に向かっていった。
意外だったのが、コイツの家が超絶金持ちだったってことだ。
病室はホテル並みの豪華さを持つ個室で、大部屋に突っ込まれてた俺とは天地の差があった。何でも華族の血筋とか何とかで、本家がある京都じゃ名が知れてる一族らしい。育ちは良いってのに、あの食べ散らかしっぷりはどうなんだか。
幸い、親御さんたちはどっちもすごいお人好しで、ちょくちょく見舞いに来る俺を歓迎してくれてた。ただ、どっちも食が細いらしい。リーナの無尽蔵な食欲の原因は親の遺伝じゃねえようだ。
「……ったく。メシぐれえ平和に食えねえのか、オメーはよ」
「あの特盛女がいけないの」
「井上はなんもしてねえだろうが」
井上が店長に呼ばれてオーダー取りに行くまで延々と続いていたにらみ合いを思い出す俺の言葉に、リーナが少しむすっとした表情を浮かべる。今日は向こうの世界でもよく着ていたような白いニットを着て、紺のホットパンツとタイツにブーツを履いている。まだ松葉杖が外れて半月経ってないせいか、歩くスピードはかなり遅い。ゆっくりとしたリーナの足取りに合わせながら、東京郊外にある小高い丘を登る。
ここは、『ソードアート・オンライン』を開発したアーガスの本社の敷地だった場所だ。茅場があれだけの大事件をやらかしたせいでアーガスは潰れ、その跡地はこうやって解放されている。会社で緑化活動でもやってたのか、郊外とはいえ都会と思えないような緑豊かな緩い上り坂を、並んで歩いていく。
「そう言や、勉強の方はどうなんだよ。なんかこの前、宿題の古文がどうたら言ってたけど」
「そっちはなんとかなった。問題は現代文。評論が本当に意味不明」
「オメーはほんと、文系科目が壊滅してんのな。英語なんて、五十点越えたことねーだろ」
「……貴方の理科科目よりはマシ」
「うっせ」
なんて会話をしながらふと前を見やると、坂の上、俺たちの目的地方向から人が下りてきた。数は三人。
一人はキリトこと桐ケ谷和人だ。
ボトムスもジャンパーも全身黒ずくめの恰好は、SAO時代から全然変わってない。顔立ち含めた全身の線
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