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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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=ブランチャードは、この旅路に問わず、この命ある限り、貴方の支持者であり続けます。貴方にどんな時であろうとも、我がブランチャード家は救いの手を差し出します。貴方に、ブランチャードの名誉を託します。・・・だから自分を滅ぼそうとしないでね、ケイタクさん」

 静かに囁いて、キーラは慧卓の胸元に己を倒れさせる。彼女のたおやかな背を抱擁した慧卓は、顎で髪の毛のなだらかさを感じ、彼女の誓いを受け止めた。

「貴方が誰を想おうと、私は負けないよ。だって貴方の事が、好きだもん」

 己が感じたものは、漠然としたものから確然としたものへと変わった。愛の告白を受けて胸が高鳴るが、それは過去に覚えた別の高鳴りに比べれば小さいものである。舞踏会で清楚に美しく己を飾ったコーデリアを見て覚えた高鳴りと比べれば。慧卓は己の恋心を自覚しつつも、胸の中に飛び込んだ少女を抱くより他が無く、静謐に流れる時間に己を委ねていった。
 


 
 屋外で警護していたパウリナが壁に凭れ掛かって静かに時を数えている。隣ではユミルが、段々と臙脂に染まる暮れの空をぼぉっと見遣っていた。
 そうしていると、ふと、屋敷の扉が開かれてミラーが顔を出してきた。

「・・・君、いいかね」
「・・・パウリナ、少しの間頼む」
「はい」

 パウリナに警護を任せてユミルは屋内へ通され、リビングへと案内される。椅子に座り込むように催促されて従うと、反対側にミラーが、ついで上階より降りてきたミントが座り込んだ。ミラーが問う。

「君も彼と同行するのかね?」
「はい。彼と共に北嶺に赴きまして、己の武を以って彼を守護する所存であります」
「・・・頼みがある。我が娘についてだ」

 居住いを正そうと肩を動かしてから、ミラーは確りとした貴族の当主の瞳で、ユミルに傾聴を迫った。

「あの娘の此処最近の心境の変化はとても大きい。ほんの少し前まで閉塞感に囚われていたような子が、今ではすっかりと恋の赤い蕾を咲かせるまでに至ったのだ。その変化は、親としてとても喜ばしい事だと思う。
 だがそれには大きな欠点がある。あの娘が他の男にその情を向ける可能性が極めて低いのだ」
「・・・ブランチャード家の一人娘という立場でありながら、私共の不徳もあって、彼女に対する宮廷の視線はとても冷めたものとなっているのです。それこそ、跡取りの候補すら挙がらない程に」
「だから我が一家にとって、あの青年は希望の綱なのだ!ブランチャードという血筋を後世に残す、未来への息吹なのだっ!あの青年がもしも何か重大な傷を負って、それが彼の死を招いてしまったら、キーラはっ・・・!!」

 真に迫る表情で二人は口を閉ざす。陰惨な深謀遠慮に惑わされて生まれた己の警戒心のためか、二人の表情が嘘か本当か見抜けなかった。しかしどのよ
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