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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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ードという貴族を利用して。ケイタクさん自身のために」

 聞けば聞くほど彼女にとって、そして彼女の家にとって何の益の無い提案であり、慧卓は困惑を浮かべてしまうより他無かった。遠くない将来において陰惨な貴族らの謀に巻き込まれる事が確実視される、たった一人の騎士を家名に懸けて囲おうとしているのだ。味方も少なく、己の力も弱い状態で。仮にこれを受けるとしても、矮小な木端貴族に先手を取られた他の貴族達の恨み嫉みは想像を絶する程のものであろう。今後の安寧を求めるならば、双方にとって正しく修羅の道への誘いであった。慧卓を追い詰めるような口調を抜きに考えても、である。
 何故このような告白を、と問おうとして、慧卓はキーラの瞳の動静に気がついた。装われた冷たい仮面の内側で、理性の瞳がふるふると揺れていた。自らを凌ぐ高貴に対する恐怖が、彼女の奥底にある常識の糧を突き崩そうとしているのだ。にも関わらず、彼女はその恐怖に正面から相対している。勇気によって手の震えが止まり、段々と瞳が落ち着いていく様子すら窺えた。明らかに、彼女は決意をしていた。そしてその決意に判を押すのは自分であるのも理解出来た。
 何が彼女をそうまでに奮い立たせるのか、俄かに感ずるものがあった慧卓は、意を決する。この無鉄砲な申し出を断る程、自分は利口ではないらしい。

「・・・・・・キーラ、約束する」
「・・・何を?」
「この旅路の間、お前に絶対に傷を負わせない。俺がお前を守り通す。騎士として、男として、お前を守護の瞳で見続ける。・・・その後で、婚約の返事を出そう。・・・後悔は、させないから」

 そして、己が本当の馬鹿に思えてならなかった。彼女と彼女の家に、一族存亡の覚悟を強いる可能性を与えたからだ。同時に、此処まで守護して貰った熊美達に対する申し訳無い気持ちもあった。必死に守ってくれたにも関わらず自分から自滅の可能性を生んでしまうのだから。
 それでも彼女の告白を拒絶する事など出来ない。これほどまでに真摯に思われたのだから、自分の方こそ真摯になるべきである。そう直感で感じたからこその言動であり、それこそ、偽らざる己の本心であった。答えをはぐらかす事だけが、精一杯の理性の要求でもある。
 キーラは大きく深呼吸をしてから、震えそうになる喉を正して言う。

「本当に、いいんだよね?」
「ああ。必ず答える」
「・・・誓って」

 キーラはそう言って、瞳を閉じる。慧卓は一瞬の躊躇いを覚えて口を噤みかける。そしてそのままの口で、己の唇をキーラの口端に落とした。上唇が微かに、キーラの柔らかく熱帯びた唇を捕えた。

「・・・上手く言葉には出来ないけど・・・これが今の俺に出来る、精一杯の気持ちだ」
「・・・ちょっぴり残念だけど、凄く伝わったよ、ケイタクさん。だから、私も誓います。私キーラ
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