第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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げようと数十本もの細い触手を露出させた。男はそれを無視し、もう一度、鎌を突き刺す。鎌の切っ先が横合いから頭部を貫いて現れ、化物の悲鳴がより高調子のものとなった。耳障りなそれは、明らかな苦悶の色を示している。
男はそれに留まらず鎌から手を離して、右手で化物の頸を掴み取り、左手でその付け根を握った。そして引き千切るためにそれを引き離しに掛かる。化物の生理的な嫌悪感を催す抵抗が激しくなり、触手だけに留まらず、多量の足を蠢かせていく。足が砂と男の身体を蹴り、鎧の萎縮と盛り上がりが激しくなり、触手から死体から抜き取った体液と肉片が逆流していく。男は笑みのように喉を震わせて、為政者の如き堂々さで、その細い頸をばりっと胴体から抜き取った。頸元から細い神経のようなものが千切れた状態で現れる。閃光のような電撃が化物の身体へと流れて、足先をびくびくと震わせる。
己へ掛かる重みが無くなったのを感じると、男は化物の身体を蹴りつけて宙へ飛ばした。数メートルほどの軽い跳躍をした後、化物の身体は背中からどんと地面にぶつかった。露呈した柔らかそうな腹を痙攣させ、爛れた触手を震わせて、その命をゆっくりと終末へ向かわせる。
「・・・す、素晴らしい・・・実に素晴らしい」
「・・・あ、あの、その・・・男の方が勝ちましたが・・・これで終わりでしょうか?」
「まだだ、白痴め!あれを見てもまだ分からんかっ!?」
レイモンドの指摘を得て、男ははっと目を開かせた。男がゆらゆらと化物の方へと忍び寄ってぐったりと膝を突かせてフードを掻き揚げ、禿げ男は初めて、其処に人の顔がある事を知った。顔中に黒い血管が浮き出ており、複雑な魔術の術式が焼印のように刻まれている。とてもまともな様相とは思えない。
それを裏付けるように、男は口を頬が裂けんばかりに開かせて、化物の腹へ食いついた。仮にも甲殻類の如き身体をしているのだからそれ相応の硬さを持っているだろうに、男はまるで紙を切るかのように腹の皮を裂き、中の黒ずんだ肉の塊を食い千切る。男が貪る膨らんだソーセージのような形状のそれは、よくよく見れば、人間の腸のようにも見えなくはなかった。空いた手で化物の胸を掻き破り、中の臓器を引き寄せてみれば、それは明らかに人間でいう所の胃の形を象っていた。掌に収まらぬ巨大な胃をぐっと握り、灰汁を絞るかのように血を流れさせながら、男は躊躇いもなく喰らいついていく。いたく上機嫌な感じを漂わせながら、男は凄惨な食卓に舌鼓を打っていった。
「素晴らしい・・・同属を食する感覚はさぞや魂を歓喜させる事だろう・・・理解出来るぞ、化け物っ・・・!!」
その言葉を聴いて禿げ男は、己が何故卒倒してくれないのかと呪いたい気持ちで一杯となった。つまりである、今獲物を食い散らかす男は明らかなる人間なのは間違いない。だが食されて
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