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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の1:勧誘
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前ですっ」
「そこまで肩を張らんでも良いぞ、ケイタク君。時は糸を紡ぐようにゆったりとしている。焦らず、じっくりと話し合おうじゃないか」
「よく言うわ。これから直ぐに出立するというのに」
「無粋ですぞ、執政長官殿」

 相手を侮蔑するような色を滲ませてマティウスという老人は言い放ち、改めて慧卓を見遣り彼の疑問を嗅ぎ取った。 

「此処に呼ばれて疑問に思っているようだね?」
「あ、はぁ・・・何故執政長官が私のような取るに足らぬ騎士を呼ばれたのでしょうか?」
「呼んだのは私だ」
「あ、はぁ、そうでしたか・・・何故でしょうか?」
「好奇心のためさ」
「へ?」
「それ以外何の理由がある?君が異界出身でなければ騎士などそもそも呼びはせん。暑苦しさが取り得の脳無しの騎士などはね」
「はぁ?」
「すまぬ。こいつは時折他人を強く見下す節があるのでな」

 レイモンドの謝罪に納得する。大方、大衆の無知を侮蔑して自らの知能の高さを誇る、その典型の人物という事なのだろう。マティウスは慧卓に向かって言う。誤魔化しようのない鋭い瞳であった。

「ケイタク君、ずばり聞きたい事は一つだけだ。異界はどんな世界なのかな?具体的に教えてくれ」
「そ、そうですね・・・世界の全体像が明らかになっていて、人は海や山を渡ってたりして、沢山の国家が成立しています。そこかしこに鉄で出来た建物や乗り物が溢れかえっていたり・・・場所によっては食べ物が種類も量も豊富でして、新しい品種の奴も作れたりします」
「ほうほう?」
「・・・昼間は仕事を携えた多くの人間が街を闊歩します。俺が住んでいる場所ではそれこそ数万、世界全体で見れば数億もいきそうなくらいに。多種多様な職業が溢れ、それぞれが生活に密接して存在しています」
「ほうほう?」
「えっと・・・昼間は凄く明るいんですけど、夜もそうなんです。稲妻の光を人間は自分で作れるようになっていて、それが夜の街を安全に照らすんです。代わりに、夜空から星空が消えるなんて現象が起こっていますけどね。あ、実際に消えたわけではありませんよ?」
「それくらい理解できるわ。大方光源が密集している場所ではその勢いが強過ぎて、人間の目が受け入れる光の量を調整しているだけだろう。光を隠せば夜空の星とて見えるだろうに、消えるとは随分と無粋な言い方ではないか」
「す、すいません・・・」

 理解のし難い理由で叱られて、慧卓は不承不承ながらもそれを受け入れた。『セラム』ではあり得ぬような情景を口頭で説明しているのだ、少なからず褒めて欲しいものである。

「・・・聞かせてくれて有難う、ケイタク君。細かい所は今度逢った時にでも話してくれ給え」
「あ、そうですか。では御機会を頂いた時に、また」
「・・・御洒落は良いぞぉ、ケイタク君。その者の魅力
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