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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の1:勧誘
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荷が重過ぎる職務です。にも拘らず他の騎士よりも優先して宛がわれるという事には、何か政治的な意図を感じずにはいられません。ましてアリッサさんが補佐官ですよ?疑念しかありませんって」
「そんなに、疑わしいのか?」
「直接過去を伺った事はないですけど、あの人はエルフを敵対視している節があります。仄めかした程度なんですけど、不安材料にはなりますね」

 ユミルは背凭れに体重を掛けて椅子をぎぃっと鳴らし、グラスで口元を隠しながら考える。慧卓の言葉から察するに、調停官やその補佐役というのは外交的な役割が強い、重要な役職の一つと言えよう。まして他民族との間を取り持つのであるなら、それが過去に内戦で対立した事があるエルフ相手であるなら、尚更である。柔軟な対応が出来る老練な者をそれに選出するのが自明の理であるが、慧卓は若い新任騎士であり、アリッサという者はエルフとは折り合いが悪いようだ。新たな風によって王国の内情を改善する選出と考えるならば納得は出来なくも無い。だがそれは余りに王国側に都合が良すぎる考えであった。無論、慧卓のように王国中枢に不信を抱くのも一方的な都合であるのは言うまでも無いが。

「話を纏めようか。お前は自らに下命された任務を受命しつつも、政治的な不信感を抱いた。そこで政治とはとは全く関係の無さそうな俺達に救いの手を伸ばした。こういう事だな」
「・・・簡単に纏められちゃったよ」
「お前の話は回りくどい。相手方に分かりやすく話そうと考えているようだが、それが逆に相手の不信感を募らせる事もある。時には直接的な言動も必要となる。覚えておけ」
「やだなぁ・・・俺そういう英雄的な行動取れないよ」
「直接的な行動をする奴が英雄となる論理など何処にも無い」
「ベッドの上では如何です?」
「・・・あほか、お前は」

 慧卓は態とらしく笑い声を漏らした。下命された重責は案外、彼の精神を鎖のように束縛するものであったようだ。冗談のように掛けられたユミルの突っ込みに、一縷の安心を抱いているようにも見える。

「・・・すまんが、俺だけでは決められん。パウリナが起きたら言っておくから、その後で改めて返事を出すよ」
「御安心を。話は一応もうしております。彼女、既に俺との旅行を期待しているようですよ」
「・・・・・・旅行、か」

 そのような安らかな旅路になるとは思えない。そう口に出して遣りたかったが、慧卓の手前、言葉は胃の中に落とす。
 自らの手の内に渡された選択の重さを咀嚼していると、とんとんと扉が叩かれて、一人の兵士が扉の外から声を掛けてきた。

「失礼します、ケイタク様。執政長官殿が御呼びであります」
「直ぐに行きます。・・・呼び出しておいて申し訳ありませんが、お話は後で。此処、俺以外使ったりしないんで、休んでいていいですよ。何かあっ
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