大嫌いだと、彼女は言った
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「気のせいじゃない?現にクロスには“姉さんが今までより笑ってくれて嬉しいよ”って言われたけど」
正直彼には姉専用のフィルターがかかっているであろうから、その意見はなんとなく信じられなかったりする。もちろんそれを口には出さない。ルーシィはそこまで馬鹿ではなかった。彼女が兄弟と相棒に対して、他と比べると甘い対応をしているのは周知の事実である。
「そ、そう……それより、何でアイツ逃げたの?ミラさんの方から告白したって話になった辺りから変だったけど」
「自分から告白出来なかったのが悔しいんですって。4年も前の事なんだから、とっとと忘れればいいと思うんだけどね」
「へー…」
「そうもいかないって本人は言うけど、話振られる度に逃げ出されてもねえ……昔はとっ捕まえてやったけど、今じゃもう面倒だわ。アイツ背高いから引き摺りにくいし」
引き摺る事前提なんだ…という言葉が咄嗟に零れたのは仕方ないだろう。多少は刺々しくなくなったものの、物事の解決に力を用いる辺りは変わらない。
と、ふとルーシィは隣の青髪問題児を見やった。同年代の中では最も長くギルドにいる古株で、妖精の尻尾こそが文字通りに帰るべき家だった彼女。ルーシィがよく接する間柄のメンバーの事は加入当時から知っていて、更にその相手がルーやアルカともなればきっと誰よりも詳しいであろう。
「ねえ、ティア」
「……8割方想像出来るけど、一応聞くわ。何かしら」
「アルカとミラさんの馴れ初めってどんな?」
「やっぱりね」
本人が語ってくれないのなら、最も詳しいはずの第三者に聞く。問題は一匹狼のティアがそれを了承してくれるかどうかの一点だが、最近ギルドメンバーはその点の攻略方法を学んでいる。
「ね、お願い!そりゃあアルカが嫌がる事だし悪いとは思うけど、今度書く小説に主人公とヒロインの馴れ初めのシーンがあるの。その時の参考になればなーって思ってて…頼めないかな?」
ぱちん、と顔の前で手を合わせ、必死に頼み込む。呆れに近いティアの表情が僅かに崩れるのを、ルーシィは見逃さなかった。
そう、ティアには“頼まれると断れない”という性質があった。もちろんそれが面倒だとか自分である必要性を感じない場合は徹底的に拒むが、今回の件は彼女でなれけばいけない。ミラに聞くという手もあるが、彼女は仕事中である。優しい彼女の事だから断らないだろうが、それで仕事に支障を来たしてしまうのは申し訳ない。
それはティアも解っているのだろう。かつてならそれでもミラに押し付けただろうが、今現在がそうでないからこその攻略法。ちらりとミラを見て、1度噛みしめた唇から盛大に息を吐く。
「……仕方ないわね」
お決まりになりつつある一言を吐き出した瞬間、攻略は完了した。
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