大嫌いだと、彼女は言った
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法で埃っぽい空気ごと飛ばし、重量のあるゴミ袋をこれまた魔法で浮かせて外に出し、外と中をゴミ袋を持って往復し続けたシャルルが疲れと埃っぽさと悪臭で墜落するまで休みなく働いた。途中でココロが積もった埃を見て「美味しそう…」と呟き、それから何かを思い出したようにがっくりしていたのも余談である。
「私、あの後聞いたんですけど……あのお屋敷、半年に1度はああやって魔導士に依頼してお掃除してもらってるみたいです」
「自分ではやらないんだね…」
「僕、どんなにお金に困ってもあの人からの依頼は受けたくないよう」
「同感ね。あんな屋敷、2度と行くもんですか!」
「……あれ?」
“それ”を発見したのは、ギルドへの帰路での途中。話は仕事の事からがらりと変わり、ルーがこの10年で経験したギルドでのあれこれを2人にお願いされて話しているところだった。その大半がティアに関係する事なのは言うまでもない。
饒舌だったルーの話が突然止まり、疑問に思ったココロが問う。
「どうしたんですか?」
「アルカが全力疾走してるよう」
「え?」
ほら、と指差した先には確かにアルカがいた。どういう訳だか焦ったような表情で、どういう訳だか足を休める事なく走り続けている。運河を挟んで向かい側の道を全力疾走する彼は、こちらには気づいていないらしい。
ジョギングというペースではないし、まるで何かから逃げているかのような姿を左から右に見送って、その後ろ姿を暫し見つめてから、3人揃って首を傾げた。
「何かあったんでしょうか」
「ミラさん関係…ですかね?」
「だったら喧しく叫んでるでしょ。あんなに静かな訳ないわ」
「きっとティアに何かされたんだよ、ご飯食べられちゃったとか。ミラ以外でアルカにあれだけの逃げ足発揮させられるのティアだけだもん」
「逃げてるのは決定なんですね…」
「まあ、詳しい事はギルドで聞きましょう」
そうだね、と同意して、3人と1匹はアルカとは逆の方向へ歩いて行った。
帰るなりティアに「アンタ達何してきた訳?服に変な臭い染みついてるんだけど」と顔を顰められるのだが、それはもう少し後の話。
「……行っちゃった」
「あらあら」
ギルドを飛び出していったアルカの後ろ姿を見送って、ルーシィが呟いた。事の元凶であるティアは余計に笑みを深め、気づけば最後の一口分にまで減っていたアップルパイを食べ終える。その表情が意地悪そうな笑みなのは変わらない。
走り去った恋人の姿を見届けてから、ミラが柔らかな微笑みはそのままに言う。
「あんまりアルカをいじめないであげてね?」
「善処するわ」
くつくつと笑いながらのそれは、きっと上辺の一言だろう。
「……何かティア、最近意地悪になってない?」
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