大嫌いだと、彼女は言った
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にルーシィがいて、ならばその隣に来るのは風使いたる彼だろう―――が、その姿はない。「ウェンディとココロと仕事行ってくるねー」とギルドを出て行ったのは数時間ほど前の事だ。かといってルーシィの隣が空いているのかといえばそれは否であり、その席ではいくらか表情を緩めて好物であるアップルパイを食べ進める姿がある。
「別に…語るような話じゃねえよ?お互い好きになって付き合い始めた、くらいな事だし」
「そうね、あんまり特別な事はなかったわよ?」
「へえー……何か意外かも。アルカの事だから、何かしらとんでもない事してそうなのに」
「お前の中でオレはどんな奴なんだ」
さらっと言われた一言に密かに傷つきつつ、話を逸らせた事にそっと息を吐く。
確かに、意外性も特別感もない馴れ初め話だ。探せばどこにだって転がっていそうな、在り来たりな昔話。話そうと思えば躊躇いなく話せそうなそれを、実はアルカは語るのを拒む。
不快な思い出ではない。けれど大っぴらに話す事でもない。日頃の彼の姿を知る人からすれば首を傾げたくなり、ルーシィだって長々と語られる事覚悟で尋ねたのだが、案外あっさりとこの話は終わりそうだった。
「ま、強いて言うなら……告白したのがアルカじゃなくてミラの方、って事かしらね」
が、その終わりかけた話から終わりを遠ざける一言が入る。
ホール丸々1つ分のアップルパイを1人で食べるという、見た人全員が「太りそうだなあ」と思うであろう事を顔色1つ変えずに進めていたギルド最強の女問題児―――ティアは、皿の端にフォークを置き、左手で頬杖をついて笑みを浮かべた。その笑い方が明らかにからかう為のそれだと、長年の付き合いから察する。そして、彼女がこの表情の時は何かしらの悪戯か悪巧みを思いついた時で、こんな顔の時に吐き出されるのは嫌がらせ染みた一言が多かったりする。例えば、今みたいに。
「え、そうなの!?」
案の定ルーシィが食い付いた。
確かに、意外ではあるのだろう。何せアルカといえば、一応時と場合と場所を弁えてはいるものの、理由もなしに好意を隠す事はしない男である。それは何もミラに限定する事ではなく、単純に好き嫌いが人よりはっきりしているというだけだ。
だからこそ意外。彼女からの好意に応えたという事は少なからずミラを想っていた訳で、それが人であれ何であれ、好きなものには好きと言うスタイルのアルカの方からの告白ではないというのは驚愕以外の何物でもない。
「ティア……?」
「あら、余計だったかしら」
だとしたら悪かったわね、と口では言いつつも、その顔は明らかに現状を楽しんでいる。あの一件の後から彼女は表情豊かになり、ついでに悪戯心を存分に発揮し始めたと思うのはアルカだけではないはずだ。悪戯っぽいというのかSっ気というのか、
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