大嫌いだと、彼女は言った
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確かにリサーナなら言いそうな事ではある。そこでミラではなくアルカにそれを伝えたのも、彼なら歩み寄ってくれると思っての事だろう。姉が彼と仲良くしようとしないのは解っているだろうから、アルカに頼んでもおかしなところは何もない。
「……仕事内容は?」
「ざっくり言えば討伐、まあ収集も兼ねてるけどな。グリードウィングの討伐兼ヒレの回収。ほら、あれのヒレって食用じゃん」
「報酬の分け前は?」
「半分ずつ…だから、10万Jか」
「仕事先は?」
「オニバス。近場だから、長引かなきゃ今日中には帰れるはずだけど」
なかなかの好条件だ。これが泊まりでの仕事なら即断っていただろうが、今日だけで終わるなら理想的だろう。報酬もまあそこそこ、内容も悪くない。
更に、これを妹が選んだというのが大きかった。大切な妹に頼まれたとなれば、断る事なんて出来やしない。
「……解った。準備するから外で待ってろよ」
「ん、了解」
返ってきた声は、やけに弾んでいた。
「悪かったわね、面倒事に巻き込んで」
「ううん、全然!あたしも、ミラ姉とアルカが仲良くなれればなって思ってたから」
テーブルの上にはケーキが2つ。1つはショートケーキ、1つはアップルパイ。
やたらと大きいテーブルを挟んで少女が2人向き合うように腰掛け、銀髪の方が首を傾げる。
「けど意外だなー、ティアが誰かの為にって動くなんて」
その一言に、青髪の少女は表情を変えずに返した。
「ただの気まぐれよ」
「なあ、ミラってさ」
聞かなければ穏便に済むと解っていても、聞きたくなる事というのは存在する。
「オレの事、嫌いなのか?」
それはアルカも解っている事で、それでもやっぱりハッキリさせておきたい事でもあった。
駅まで向かう道中、特に会話もなく歩いていた2人。何気なく投げかけた疑問に、ミラは何を言っているんだと言いたげに眉を寄せる。
「相性の問題なのかもしれないけど、やっぱり仲良くなりたいとは思うからさ」
顔を見れない。どうにか選んだ言葉を並べる事しか出来ない。
どうにか顔だけは取り繕わなければと浮かべた笑みは、引きつっていないだろうか。かつて青い目に見透かされた、彼女以外は誰だって誤魔化せるあの笑みは顕在か。
彼は笑っていた。それはそれは素敵なにっこり笑顔を浮かべていた。
きっと、この顔を見て笑っていないと判断する人はいないのだろう。けれど、ミラの目にはどうやっても歪んで映ってしまっている。
「ああ」
その顔は本心から笑わない。いや、きっとどこかでは心の底から笑っていて、けれどそれが普段の誤魔化した顔と大差ないから解らないだけだ。
怒りも悲しみも嘆きも―――
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