第十一話 ワルド夫人と虚無の復活
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「心臓を……取り替えるのでございますか?」
「なるほど、それならば……」
ワルド子爵は驚きながら。そして、夫人の方は『その発想は無かった』と、何やら思案をめぐらせている。
「その、殿下、代わりの心臓は何処から?」
ジャン少年はある意味核心部分を聞いてくる。
「それは、これから考えます。場合によってはクローン心臓、心臓の複製も視野に入れています」
「そのような事が可能なのですか?」
「僕は可能を考えています」
とは言え、ドナーを一から探していたら時間なんてあっという間に過ぎてしまうだろう。
(時間的にギリギリだが『複製』の魔法の研究をすぐに始めよう」
魔法を持ってすれば……難しいが不可能ではない。
そんな状況にマクシミリアンは少しだけ気が楽になった。
「それと、ワルド夫人。増大する精霊と世界の危機について、ちゃんとした報告書でまとめて提出して下さい。それと、これからは僕のほうに報告をお願いします。そして、件の事は他には絶対に漏らさないように。下手をすればパニックになりますからね」
と、ワルド夫人に釘を刺した。
「分かりました」
ワルド夫人は頭を下げ了承した。
一方、ワルド子爵が恐る恐る聞いてきた。
「殿下はその……妻の話をお信じになられるのでございますか?」
「夫人の話を聞いていましたが、彼女は十分、理性的でしたし。今まで誰にも相談出来ずに切羽詰っていたんでしょう、そのせいで狂ったと勘違いされたんだと思います。それに一応、対策はとっておかないと、後で泣きを見るのは嫌ですから」
「殿下、ありがとうございます。それともう一つ……」
ワルド夫人が話しに入る。
「トリステイン西に、かつて存在した『ブリージュ』の街跡をお調べになられたらいかがでしょうか?」
「ブリージュ……ですか」
マクシミリアンは黙考して、脳内からブリージュの情報を引き出す。
ブリージュはかつて存在したトリステイン第三の都市で何百年か前の地殻変動で崩壊。数多くの犠牲者を出した。
その後、廃都となって、元住人たちは北のアントワッペンの街に移り住んだ。
そして現在、アントワッペンはトリステイン第二の都市にまで成長している。
「ブリージュの地殻変動は精霊石の仕業。と、そう仰るので?」
「私はそう考えています」
「……分かりました。今すぐ……とまでは行きませんが、考慮しておきます」
そう言って、退室しようと振り返る。
「ああ、忘れるところだった。ワルド夫人は僕の家臣団に入れますから、軟禁を解いてあげてくださいね? ワルド子爵」
その言葉と聞いた、ワルド子爵は頭を下げ了承した。
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