第十一話 ワルド夫人と虚無の復活
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二人とも無言のまま、屋敷を奥へ奥へと進んだ。
さらに奥へ進むと、滅多に人が来ないのだろう。ひんやりとした空気が廊下に漂っていた。
冷たい空気の中を進むと、重厚な木製の扉が二人の行く手を塞いだ。
「お待たせいたしました」
ワルド子爵がマクシミリアンに一礼して、アンロックの魔法を扉にかけた。
「……?」
「どうかしたのかい?」
「は、すでにアンロックをかけた後のようでして……」
「誰かが、もう入ったって事?」
「……おそらくは」
ワルド子爵は首をひねりながらも扉を開けると。奥から誰かが言い争う声が漏れ聞こえた。
『……! ……!!』
『……!」
誰かが言い争う声に、マクシミリアンとワルド子爵は顔を見合わせる。
「これは……!?」
「ともかく参りましょう!」
駆け出すワルド子爵の後に続いてマクシミリアンも走り出した。
人を呼ぶべきなのだろうが、二人ともそこまで思考が及ばなかった。
「ジャン・ジャック退いて! マクシミリアン殿下がお見えになられているのなら、伝えないと行けないのよ!」
「母上、いい加減にしてくれ!」
言い争う声をたどって行くと、ちょうど階段の上でジャン少年と母上……と、言っていた事から、おそらくワルド夫人がもみ合っていた。
「あれは!?」
「二人とも何をしている! マクシミリアン殿下の御前であるぞ!」
ワルド子爵が一喝すると二人はピタリと止まって、声の有った方向を見た。
「父上! マクシミリアン殿下!」
ジャン少年は何処か『助かった』と、言った表情で二人の名を呼んだ。
「ジャン・ジャック、これはどういう事か」
「はい、母上が部屋から抜け出してしまいまして……」
ジャン少年がワルド子爵に説明をしている隙を突いて、ワルド夫人がマクシミリアンに駆け寄った。
「マクシミリアン殿下、お会いしとうございました!」
「あ、ああ、こちらこそ、初めましてワルド夫人」
駆け寄って、手を握るワルド夫人にマクシミリアンも苦笑いをするしかなかった。
「実は殿下にお知らせしたき事がございます。世界は今まさに崩壊の危機に瀕しています。どうか、どうか、殿下のお力をお借し下さい」
「へっ? え、えぇ〜っと、崩壊の危機……ですか?」
ぶっ飛んだ、ワルド夫人の発言に思わず、引いてしまった。
若干、引き気味のマクシミリアンを差し置いて、ワルド夫人はベラベラと持論を展開した。
年々増大する精霊に比例して地下に眠る精霊石が膨張し、最後には全世界がアルビオン大陸の様に空に浮かぶ……と、ワルド夫人は言う。
そして、それを阻止するには伝説の虚無の復活を待ち、その虚無の使い手を連れて聖地へ行かね
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