第十一話 ワルド夫人と虚無の復活
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着きすぎたと言う事で、暇つぶしのため宛がわれた部屋で一人でチビチビと紅茶を飲んでいると、ノックと供にワルド子爵と中学生くらいの少年が入ってきた。
「マクシミリアン殿下、急なお誘いにも拘らず、御出で下さいましてありがとうございます。パーティーはもう間もなくですので、もうしばらくご辛抱して下さい」
「ありがとう、ワルド子爵。所で後ろに控えているのは子爵のご子息でしょうか? 是非、紹介してもらえないでしょうか?」
「かしこました。さ、殿下にご挨拶をしなさい」
ワルド子爵が後ろに控えていた少年に促した。
「ご尊顔を拝し恐悦至極に存じ奉り上げます。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドと申します……」
「初めまして、ミスタ・ジャン。僕の1・2歳ほど年上見たいな感じですが何歳でしょうか?」
「はい、今年で12歳になります」
「なるほど。僕は同年代の男の子とは付き合いが少ないから、色々と話し相手になってくれると助かります」
「ははっ、身に余る光栄!」
・・・・・・などと、世間話をしていると、時間が過ぎていった。
ジャン少年は退室して、今は子爵がマクシミリアンの相手をしている。
マクシミリアンはワルド夫人の事について切り出す事にした。
「ワルド子爵、実はお願いしたい事がありまして……」
「ははっ。何なりと申し付け下さい」
「ワルド夫人……奥方に会わせて欲しいのです。夫人がカトレアの治療を行った際のデータを見れば何かヒントになるような事が書かれてあるかもしれない。ワルド子爵。どうかお願いします」
マクシミリアンは頭を下げた。
……王子が一貴族に頭を下げる。
封建社会では決して許されない行為だった。
「お、御止め下さい殿下!」
思わずうろたえるワルド子爵。
もし、この事が誰かに漏れでもしたら、ただでは済まない。
かと言って、聖地狂いの妻をマクシミリアンに会わせる訳にも行かない。
(もし、殿下に何かあったらワルド子爵家は破滅だ……)
ワルド子爵にとって、事あるごとに『聖地へ行かねば』と喚き散らす妻の姿は、他の者には見せたくない恥部と言えるものだった。
だからこそ、外の者と接触しないように屋敷の最深部の部屋に軟禁していたのだが。
どっちに転んでもワルド子爵に角が立つ。
しかたなくワルド子爵自身も同席する事を条件に了承する事にした。
☆ ☆ ☆
ワルド子爵に連れられ屋敷の奥へと進む。
途中、パーティーで振舞われる料理を調理しているのか、良い匂いがマクシミリアンの鼻をくすぐった。
「……」
「……」
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