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歌集「春雪花」
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 才もなく

  力もなくば

    虚しける

 恋影探す

    冬の夕暮れ



 私には豊かな才能はなく…況してや人が驚くような力もない…。
 努力しても報われず、こんな歳まで生きて…気付けば然して何も残すものもなく…虚しいばかりだ…。

 そんな私が…彼を愛しても叶う筈のない夢…。
 だが…冬の寂しさに覆われた夕暮れ時には、もし彼と生きれたら…と、考えてしまう…。

 何とも憐れな生き様…そう思ってしまうものだ…。



 光り射す

  朝に凍みし

   窓硝子

 君を想へば

    夢となりぬる



 やけに寒い朝…見れば、窓の硝子が凍りついている…。

 一枚一枚…凍りついた硝子の模様は違った顔を見せ、まるで色のないステンドグラスのようだ…。

 それは寒々とした冬の象徴でもあるが、彼にも見せたいと思った時、不意に…一緒に居たらと、夢を見てしまった…。

 ありえない夢…それはこの凍りついた硝子のように様々な顔を見せ、ほんの一時…私はその夢が現実になるのではと希望をもってしまった…。

 虚しいだけだ…けれど、もう少しだけ…。

 そうして朝の陽射しに照された凍りついた硝子の模様を、私は彼を想い…暫し見入っていた…。




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