第二十六話
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寝ないの?」
「……俺の勝手だからな」
ちょっと反撃したけど、サラリと避けられてしまった。
出会った当初はイライラしたものだが、今はこの何てことのない言い争いが楽しい。
今日だけで、本当に色んなことがあった。
いきなり店の売り物をダメ出しされたかと思えば、いきなりそいつと外に出かけることになるし。
初めて行った街で、そいつに甘いクレープを買ってもらったかと思えば、いきなりダンジョンに飛ばされるし。
いきなりダンジョンに飛ばされたと思ったら、そいつがあたしを護るようにして抱きしめられてたし。
そいつと一緒にダンジョン攻略してたら、ボスにやられちゃってそいつに助けられたし。
その後宿屋でそいつと他愛のない話をしたり、サンドイッチを食べさせてもらったり。
――本当に色んなことがあって、どれもこれもが現実じゃないみたいで、照れくさくって、楽しくて。
「……ね、ショウキ。手握って」
「ん? ……まあ、良いけど」
あたしのつい口から出て来てしまった頼みにも応えて、近くに『そいつ』の――ショウキの手が伸びてきたので、観念して手を握る。
――やっぱり、暖かい。
あたしが夢うつつで感じていた温もりと同じ、人間の温もりだ。
「――――……」
手を握っている片割れであるあたしは、こんなにドキドキしていると言うのに、ショウキはもう寝てしまっているようだ……デリカシーの無い奴め。
私は、今までこの世界の……アインクラッドの何もかもが偽物だと、たががデータのことだと思っていた。
でも、今感じているこの人間の温もりも、偽物だと、所詮は、データのことだて切り捨てて良いのだろうか?
確かに、これはデータで流れてきているただの情報かもしれないけど……これが人の温もりであることに違いは無い。
「……気づかせてくれて、ありがとう」
こんなお礼の言葉、面と向かっては絶対言えないけれど、今はこの状況に感謝しよう。
ショウキはもう寝静まり、あたしの言葉は聞こえていないようだし。
「……好き」
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