出来ることなら、もう一度。
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、不安そうにしているアリサを落ち着かせるためにまた強く手を握った。
――――谷地、学校をやめて仙台に戻った方が良い。
◯
「……アッキーはやめるの?」
「…………ああ」
「どうして? アッキーは何も悪くないのに、どうして?」
「いいんだよ、それで。俺はあの中にはあわなかった。邪魔ものだったんだから」
「そんなことない! そんなことないのにぃ……あんまりだよぉ」
彼が学校をやめて仙台に帰るということは、それは二人の別れを暗示している。それをお互いに感じ取っているからか、どこか気まずいものを感じる。
そして彼の中に一つ固く決意したものが一つ。東京を離れるにあたって、一つのけじめとして彼女に切り出さなければならない。まるで追い打ちをかけるようで、実際にかけるような形になってしまうが、こればかりは、どうしようもなかった。
「アリサ」
「……なあに?」
「別れよう」
「……っ、…………分かった」
全部自分が悪い。こういう状況になったのも、彼女を悲しませてしまったのも、自分が自分の都合ばかりを優先した結果こうなったのだ。
別れをこうして切り出すのも身勝手だと思ってる。迷惑ばかりをかけた。
「……アッキー、私待ってるから」
「……え?」
「アッキーがまたバレーでここの東京体育館に来るのを待ってるから」
…………本当に自分には合わないほどいい人だよ。敵わないなあ。
谷地廣秋。中学二年生の夏の終わりだった。
◯
「お兄ちゃん、朝だよ、起きて」
ドア越しに妹の声が部屋に響き、僅かに寝ぼけていた頭を完全に覚ました。懐かしいけど思い出したくもない夢を見ていた気がする。
そうカレンダーに目を向けるとあれから三年が過ぎ去っていった。
「お兄ちゃん、起きた?」
「おおー。すぐ行くよ」
「分かったー」
ぼさぼさになった紙を手櫛でガシガシと荒く整えると部屋着から制服へと着替える。それから部屋を出てリビングに向かうと椅子に座って朝食を食べているのは妹である仁花だけだった。母親の姿が見えないからもうすでに仕事に行ってしまったようだ。
キッチンに行き冷蔵庫からお茶を取り出すとコップに注いでテーブルに向かう。
朝食はトースト。お茶ではなくて牛乳にすればよかったと少し思ったが、別にそんなに気にすることでもないし、また立ってキッチンに行くのが面倒だったから構わず食べ始める。
……二人の間に会話はなく、テレビも付けていない為、トーストをかじるサクッという小気味のいい音だけがリビングに木霊しているようだった。
別に二人の仲が悪いわけではない。話しかけられれば返すし、勉強だって教え
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