出来ることなら、もう一度。
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のは。靴は隠され、ノートには落書きされ、教科書はトイレに捨てられ。いじめも受けた。それでも彼女には心配を掛けたくないから務めて笑っていた。でも、もう限界だった。もう耐えられない。
「ああ、ありがとう」
「だけど、全然打たなかったわね? どうしたの? 作戦?」
「え? あ、ああ、うん」
咄嗟に誤魔化した。ほかの部員の方に視線を向けると相当数が睨んでいた。慌てて視線を下に逸らす。
そんな俺の態度を見て何かを察したのだろう。誤魔化せずに、隣に腰を下ろして手を握り、俯いている顔を覗き込もうとする。
「どうかしたの?」
「……どうもしてないよ」
「嘘。だって、アッキー泣いてるもん」
思わず握られてない方の手で目元に触れた。濡れていた。それから今まで耐えていた壁が壊れた気がする。止まらなくなった。
隣で慌てているアリサを横目に溢れて零れ出す涙が学校指定のジャージにシミを作るのにも構わず静かに泣いた。
拍手が起こる。どうやら表彰式が始まっているようでチームメイトが嬉しそうに笑っていた。
本来であれば自分もあの場にいる筈なのに、会場の隅で泣いているなんて悔しすぎた。そして、情けなかった。目元をジャージの袖で拭って顔を上げる。彼女が心配そうにしているが、頑張って気丈に振る舞った。
「谷地」
「え、か、監督」
「座ったままでいい。話があるんだが……」
監督は隣のアリサに視線を向けた。卒業生でもある彼女は監督――――顧問の先生のことを知っているようで挨拶を交わした。それから強い眼差しを向け合うが、先に折れたのは監督の方だった。
呆れたように溜め息をつく。どうやら一対一で話したいようではあったが、彼女の意思を尊重しようと思って、話を先に進めるように促した。
「やれやれ……かなりつらい話になるがそれでもいいのか?」
二人は同じタイミングで同じように頷いた。
「……ハアッ、いいかよく聞けよ。お前が部内で孤立していること、クラスで虐められていることは事実だな?」
「はい」
アリサは驚いて彼の顔を見る。全く動揺していない姿に事実であることを思い知らされる。それでも話は進んでいくが、落ち着きを失った彼女を制するために握られていた手を強く握り返した。それで少し落ち着きを取り戻せたようだった。
「教師側としてもいろいろと対策を講じてみたんだが……まったくの逆効果でな。逆に被害を広げかねないと判断していたんだが、このままでは危ないと俺一人の独断で下した」
その先は聞きたくなかった。何を言わんとしているのかが容易に予想できてしまったからだ。でも、それがもしかしたら最善なのかもしれない。
自分が不安に押しつぶされそうにも拘らず
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