十九話:憧れ
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ゾンさえすることができればの話だが。
「頼むぞ……アインス」
「ああ……ユニゾン…イン」
ユニゾンに必要な魔力だけは切嗣が使用し、二人は目を瞑る。
すると、地獄のような景色の中にまるで天国のような明るい光が差し込む。
もしも、この光景を見た者が他に居たのならばこの地獄に希望を抱いただろう。
眩い光に包まれ、その姿を消す切嗣とアインス。
一瞬の後に光が途切れ、眠る少女とそれを抱きかかえる一人の男が現れた。
男の髪は白というよりも銀色に輝き、開かれた二つの瞳は血のような紅さを湛えていた。
切嗣の体にアインスの特徴が如実に表れた姿。
つまりは、二人の体は融合したのだ。
『ユニゾン―――成功だ』
「アインス、すぐにこの子を安全な場所まで転送してくれ」
『了解した』
成功に喜ぶこともなく、切嗣はすぐさま少女を転送するように促す。
それにアインスも阿吽の呼吸で応えて、あっという間に魔法陣を完成させる。
その中に少女を優しく置き、切嗣は軽く治療するようにも頼む。
だが、アインスは言われる前から分かっていたとでもいうように既に行使していた。
切嗣はそのことに少し笑みを零し、息を吐く。
「じゃあ、転送をしてくれ」
『ああ』
恐らくは救護隊が来ているであろう座標に転送を行うアインス。
そして、それが終わると後回しにしておいた自身と切嗣の体の治療を始める。
元々集められた魔法をただ行使する存在であったが、簡単な治療魔法の構成と使用法は記憶の中にあったために夜天の書がなくとも難なく使用が可能であった。
覚えておいて良かったと心底思いながら彼女は彼に話しかける。
『まさか、ユニゾンまでできるとはな。どうやら、私達は色々と相性がいいようだ』
「うん、成功して本当に良かった。……はやてに少しは似ているのかな」
どこか、自嘲気味にはやてに似ているのだろうかと呟く切嗣。
そんな切嗣の様子に励ましてやりたいと思うが、今はそれよりも優先するべきことがあるのでアインスは主導権を奪い、彼の体を無理矢理に炎の中に向かわせる。
切嗣は最初こそ驚いた顔を見せるものの、すぐに表情を引き締める。
『まだ、救う者が居るのだろう。だから私を助けた、違うか?』
「……うん。まだ、助けを待つ人が居る…ッ」
愛しているから救った。そう口にしたくともできない切嗣を気遣い、アインスが声をかける。
切嗣はその言葉に奥歯を強く噛みしめ、悔しそうに肯定する。
以前よりも意識して平等であろうとしなければならない。
いつかは彼女を切り捨てる日が来てしまう。いつかはその愛を裏切らなければならない。
それに耐えるには自分の心に嘘をつくしかない。
こんなどこまでも弱い
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