十九話:憧れ
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なのに、その命を自分の為に投げ出してくれた。その事実が重く、重くのしかかって来る。
「アインス……僕は…僕は…ッ!」
「切嗣……逃げろ…今ならまだ逃げられる……天井もない…飛べるはずだ」
「そんなことは―――」
「その子を……助けたいのだろう?」
自分を見捨てて行けと言うアインスに当然のように反論する切嗣。
だが、彼女から諭すように少女を救えと言われて黙り込む。
このまま、三人で転移をすれば全員で生き残れる可能性がある。
しかし、それはできない。転移魔法は座標の割り出し、さらに複雑な魔法結合と構成を必要とするために回路が傷つき、精密な操作が行えない現状では使えない。
それが分かっているからこそ、アインスは自分を置いて逃げろと言っているのだ。
彼女の判断はどこまでも正しい。だからこそ、切嗣を深い絶望に叩き落す。
今更ながらに自分が犠牲者達に与えてきた絶望の重さを実感する。
こんなことを正しいなどと割り切るのは人間ではない、ただの機械だ。
「……僕も飛べそうにないよ」
「それは…私を……含めた場合だろう? 今なら…その子と…お前だけなら……」
ダメ元で否定の言葉を続けて出してみるが笑いながら返されてしまう。
そして、彼女の小さな口から血が溢れ出てくる。
このままではどう足掻いても彼女は助からない。
死ぬべき人間を犠牲にし、生きるべき人間を救う。それだけのことだ。
衛宮切嗣が取るべき行動は一つだけ―――彼女を見捨てることだ。
「でも……それは―――他に道がない場合だ」
だが、しかし。今だけは衛宮切嗣は諦めるという選択はしなかった。
本物の正義の味方であろうとした。それが、スカリエッティの悪意だとしても。
後で、今までの犠牲への裏切りだと糾弾されることになろうとも。
今この瞬間だけは正義の味方を張り続けようとした。
彼女を救うだけではない。まだ取り残された者達も救わねばならない。
そのために彼女の力は必要不可欠なのだ。
「アインス……君は僕とユニゾンはできるかい?」
「まさか……主以外とは……いや…やってみなければ……分からないか」
「これが成功すれば君と僕は助かる……理論上はね」
切嗣の考えはアインスとユニゾンを行うことで、アインスに魔法を使わせることだ。
融合中はお互いに相手の魔力を自由に使用することが可能となる。
つまり、魔力を溜めることのできないアインスが切嗣の魔力を使えるのだ。
そうすれば、回路が傷ついた切嗣の代わりに魔法を行使することが可能になる。
この場面で必要な転送魔法に治療魔法も使用可能となる。
治療魔法に関してもアインスの行使であれば素質があるので可能だ。
それも全てユニ
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