十九話:憧れ
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も必死に落ちてくるであろう巨大な瓦礫から逃れようともがく。
だが、あれほどまでに軽かった足は今やピクリとも動いてくれない。
それでも、彼は諦めることだけはしたくなかった。少女だけでも守ろうとした。
遂に限界を超え、巨大な音と共に降り注いでくる巨大な瓦礫を防ぐためにシールドを張る。
しかし、加速の反動の為に魔力は余っていても魔法回路が傷つき、制御ができない。
その為に普段の十分の一程度しか魔力が注げず、見る見るうちに削り取られてしまう。
それでもなお必死に足掻き続けて、彼はシールドを維持し続ける。
だというのに、神は彼を嘲笑うかのように横合いから強烈な爆発をも引き起こした。
想定外の範囲からの攻撃に遂に限界を超え、砕け散るシールド。
そして、止めとばかりに完璧な位置で二人を押しつぶしに来る瓦礫。
ここまでかと思い、少女を守るように覆い被さり目を瞑る切嗣。
そんな時だった。聞こえていいはずのない声が聞こえたのは。
「切嗣ッ!」
聞き覚えの有りすぎる声の主に体が突き飛ばされる。
続いて聞こえたのは重い物体が人体を潰す鈍い音。
そして、皮膚に感じたのはぬるりと生暖かい鮮血。
最後に驚愕に見開いた目に飛び込んできたのは赤く染まった雪のような白い肌。
頭の中が真っ白になる。どうしてという気持ちが沸き上がり、ついで悲鳴を上げる。
こんなところに居るはずのない最愛の女性の名を。
「―――アインスッ!!」
切嗣と少女を庇い、瓦礫に押しつぶされた状態に関わらずアインスは弱々しく微笑む。
反対に切嗣の顔は蒼白になり、少女を抱えたまま体を引きずるように彼女の元に向かう。
そして、生存者を探している間中、彼女が必死に自分に呼びかけていたことを思い出す。
続いて、自分はその声を無視していたことを思い出し、後悔に打ちひしがれる。
何と馬鹿だったのだろうか。人間であれば心配して来ても何らおかしくない。
愛する者の危機に猛々しく血を流すのが人間の本質だ。
そんなことも思い出せない程に自分は人間を理解していなかった。
そもそも、最愛の女性よりも他人の心配をするのは人としておかしい。
「どうして君が…っ!」
「だって…幾ら……声をかけても……応えないから……心配で……」
「違う…違う…ッ! そうじゃない! どうして僕を庇ったんだ!?」
庇われるような人間でもなければ。守られる資格もない人間だ。
言外にそんな意味を含んだ言葉を吐き出しながら切嗣は彼女の前で崩れ落ちる。
精神的にも肉体的にも既に限界を超えていた。
防げたはずだった。全ては自分のせいだ。
呼びかけられた時に少し考えればこうなる可能性にも思い至ったはずだ
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