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心理
6部分:第六章
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第六章

「この事件はすぐに終わるってな」
「ええ。事件の内容はよくある話でしたね」
「事件というものはそういうものだ」
 梨田は岩隈にこう述べた。
「結構な。何でも実際は簡単なものなんだよ」
「何でもですか」
「そうさ。犯人だってわかったのもな」
「それですよ」
 何故梨田が事件は簡単に終わるのか言ったことが不思議で仕方なかったのだ。そのことを彼に聞きたいのである。
「何でそれがわかったんですか?」
「夜に張り込みに行ったな」
「はい」
 梨田はまずはこのことを彼に話した。
「それがどうしてかわかるか?」
「いいえ」
 そう言われてもだった。彼には全くわからなかった。
「どうしてなんですか?そういえばって感じですけれど」
「人の心理ってやつだ」
 梨田がここで言ったのはこれだった。
「人間心理だな」
「人間心理ですか」
「人ってのは自分がやったことを確認するものだな」
「はい」
 これは自分もそうだからわかった岩隈だった。仕事をすればチェックせずにはいられない、これは誰でも普通にすることだった。
「それはやっぱり」
「それだ。それは人を殺しても同じなんだよ」
「人を殺してもですか」
「特にそうだな」
 それは特にというのだった。
「人を殺したことがばれたら捕まるな」
「ええ、絶対に」
「そしてそれを避ける為には」
「証拠があってはならない」
 岩隈は聞きながら言葉を続けていく。
「絶対に」
「それを確かめずにはいられないな。失敗はそのまま破滅につながるだからな」
「だからあの夜出て来たんですね」
「そうだ」
 まさにそうだというのだった。
「だからだ。あの別嬪さんはあの夜来たんだ」
「犯行の手懸かりがまだ残っていないかどうか」
「確かめずにはいられなかった」
 梨田は言葉を続ける。
「そういうことさ」
「成程、だからあの夜張り込んだんですね」
「絶対に来ると思っていた」
「絶対にですか」
「確かめずにはいられないからな」
 またこのことを岩隈に話すのだった。
「だから絶対に来るってな。実際に来たしな」
「それで事件は解決できましたね」
 岩隈は今度はこのことを話した。
「いいことですね」
「そう思うな。何でもそうなんだ」
「何でもですか」
「人は自分がしたことを確かめずにはいられない」
 またこのことを言う梨田だった。
「それが人間心理の一つだからな」
「そこを考えれば事件は解決するってことですね」
「ほら、言うじゃないか」
 梨田は汗をかくのを楽しみながら岩隈に話した。
「孫子だったか」
「ああ、あの中国の」
 岩隈もその名前だけは知っていた。中国の有名な兵法家である。
「あれですね」
「城を攻めるのは下策で」
「そし
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