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恋姫†袁紹♂伝
第34話
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「鈴……々?」

「なにをやってるのだ愛紗! はやく逃げるのだ!!」

 関羽の目に理性が戻ったのを確認し、華雄は小さく舌打ちをする。

「華雄様! 形勢は我々の有利、このまま押し切りましょう!!」

「そうだぜ姉御ォ! 予定通り劉備軍は釣れたんだ、奴等に目にもの見せてやろうぜぇッ!」

「な!? それが狙いか!」

 正気に戻った関羽は状況を理解する。近くに趙雲隊が居るとはいえ敵中に孤立、自軍は手練れである義妹を救出に向かわせた代償に、精鋭である華雄軍の攻撃をまともに受けている。

 ――ならばせめて華雄だけでも!

 敵将も討てなければ自軍に残るのは半壊以上の損害のみ。どうにか討たねばと得物を握り直す関羽だが――

「退くぞ」

『!?』

 撤退を口にしたのは華雄だ。その言葉に連合軍、董卓軍関係なく目を見開く。
 それもそのはず、いくら趙雲隊が居るにしても数が少ない、参戦した劉備軍は寡兵。
 このまま続ければ華雄軍の勝利は確実、彼女の兵たちはそう認識している。

「なんでだ姉御!? このまま続ければ――」

「二度も言わせるな」

「ッ……野郎共、撤退だ!」

『オオオォォッッッッ!』

「逃がすか!」

 撤退を開始した華雄達を確認し、後を追おうとした関羽がすぐさま馬をとめる。
 兵達が引いていく中、華雄だけがその場に残ったのだ。

「やりのこしたことがある――関羽!」

「ッ……」

 一騎打ちを再開しようとでも言うのだろうか、警戒する関羽の目に信じられないものが映った。
 華雄が頭を下げたのだ。未だ矢が行き交い、目の前に敵が居るこの状況で。

「お前ほどの武将が忠を置く主だ、劉備は素晴らしい御仁なのだろう。
 私の発言を撤回すると同時に謝罪する、この通りだ」

「……ッ今更!」

 謝罪を受けようとしない関羽だが、彼女の心情を読み取った華雄は満足そうに頭を上げる。
 関羽がその気になれば先程華雄を討てた。いくら猛将とはいえ、関羽ほどの武を目視無くして捌く事は出来ないのだから。恐らく主を侮辱されたことで、簡単に謝罪を受け入れられないのだろう。

「フッ……またな関羽! 次は決着をつけようぞ!!」

 それだけ言うと華雄も撤退を開始した。

「くっ……趙雲! 奴等の追撃を!!」

「無駄だ。した所でこの兵力では返り討ちに遭うだけよ、私達に出来るのは華雄の慧眼を褒めることだけだ」

「華雄の……慧眼?」









「詰みかけていた?」

「ああ」

 撤退する中、華雄はその理由を部下に説明していた。

「正気の関羽は簡単に討てない、それに状況を理解した奴は趙雲達の助力を断らないだろう。
 
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