第34話
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「鈴……々?」
「なにをやってるのだ愛紗! はやく逃げるのだ!!」
関羽の目に理性が戻ったのを確認し、華雄は小さく舌打ちをする。
「華雄様! 形勢は我々の有利、このまま押し切りましょう!!」
「そうだぜ姉御ォ! 予定通り劉備軍は釣れたんだ、奴等に目にもの見せてやろうぜぇッ!」
「な!? それが狙いか!」
正気に戻った関羽は状況を理解する。近くに趙雲隊が居るとはいえ敵中に孤立、自軍は手練れである義妹を救出に向かわせた代償に、精鋭である華雄軍の攻撃をまともに受けている。
――ならばせめて華雄だけでも!
敵将も討てなければ自軍に残るのは半壊以上の損害のみ。どうにか討たねばと得物を握り直す関羽だが――
「退くぞ」
『!?』
撤退を口にしたのは華雄だ。その言葉に連合軍、董卓軍関係なく目を見開く。
それもそのはず、いくら趙雲隊が居るにしても数が少ない、参戦した劉備軍は寡兵。
このまま続ければ華雄軍の勝利は確実、彼女の兵たちはそう認識している。
「なんでだ姉御!? このまま続ければ――」
「二度も言わせるな」
「ッ……野郎共、撤退だ!」
『オオオォォッッッッ!』
「逃がすか!」
撤退を開始した華雄達を確認し、後を追おうとした関羽がすぐさま馬をとめる。
兵達が引いていく中、華雄だけがその場に残ったのだ。
「やりのこしたことがある――関羽!」
「ッ……」
一騎打ちを再開しようとでも言うのだろうか、警戒する関羽の目に信じられないものが映った。
華雄が頭を下げたのだ。未だ矢が行き交い、目の前に敵が居るこの状況で。
「お前ほどの武将が忠を置く主だ、劉備は素晴らしい御仁なのだろう。
私の発言を撤回すると同時に謝罪する、この通りだ」
「……ッ今更!」
謝罪を受けようとしない関羽だが、彼女の心情を読み取った華雄は満足そうに頭を上げる。
関羽がその気になれば先程華雄を討てた。いくら猛将とはいえ、関羽ほどの武を目視無くして捌く事は出来ないのだから。恐らく主を侮辱されたことで、簡単に謝罪を受け入れられないのだろう。
「フッ……またな関羽! 次は決着をつけようぞ!!」
それだけ言うと華雄も撤退を開始した。
「くっ……趙雲! 奴等の追撃を!!」
「無駄だ。した所でこの兵力では返り討ちに遭うだけよ、私達に出来るのは華雄の慧眼を褒めることだけだ」
「華雄の……慧眼?」
「詰みかけていた?」
「ああ」
撤退する中、華雄はその理由を部下に説明していた。
「正気の関羽は簡単に討てない、それに状況を理解した奴は趙雲達の助力を断らないだろう。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ