記憶
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「ふぅ…」
私はため息をついた。誰が敵で誰が味方なのかわからなかったからだ。
まずお父さんから言われた言葉を思い出してみる。
『お父さんはここにいる悪い人たちをおびき寄せるために戦闘現場に行ってくる。それが終わって無事お父さんが帰ってきたら一緒に海外に飛ぼう。安心して。お父さんには力強い味方がついていて、その人がお父さんのことを助けてくれるから。』
悪い人、か。
私はどうしても悪い人とは思えなかった。特に総悟。
悪い人がこんなに私に優しくしてくれるだろうか。それに、行く前に喋った時のあの笑顔が忘れられなかった。
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
お父さんを信じるべきか。
総悟たちを信じるべきか。
全くわからない。せめて、記憶さえ戻ってくれば。
その一心で私は総悟にもらった隊服と写真を見つめた。
チャイナ服の可愛い女の子と肩を組んで満面の笑みを浮かべてピースしている私。これが悪い人たちの前で取る行動?記憶をなくす前にカモフラージュのために撮ったとしても私は捕まえられている中でこんな顔ができる人じゃない。
これが合成だということもあるかもしれない。
でも、なんとなく私はそんな気はしなかった。
そしてお父さんへの疑惑が積み重なっていった。
どうしてお父さんは写真を渡してくれなかったのだろう。
どうしてお父さんはお母さんのことを話さなかったのだろう。
どうしてお父さんはメガネを私にかけさせたのだろう。
どうして…?
お父さんへの疑問が積もり積もっていく。
〈おい!恋奈!おい!恋の字!〉
突然、天井から(いや、空から?)声が聞こえてくる。なぜか馴染みのある声だ。どこかで聞いたことがある気がする。
「だ、誰ですか?」
〈今までの経緯は見せてもらったが、俺のことも忘れてたのか?〉
「ほ、本当に誰なんですか!神様?」
〈神様、か〉声は舌打ちをした。〈本当に何も覚えてないのか?ほら、平賀源外だよ!からくり技師の!〉
「ひ、平賀源外ぃぃ?」
不思議と初めて聞く名前ではなかったが、誰かはわからなかった。それがもどかしく、私はベッドをバン!と叩いた。バキボキと鉄骨が折れる音。
〈まあまあ、落ち着いて聞け、恋の字。いいか、銀の字たちが今ピンチだ。天導衆にやられてる。今から道順を教えてやるから、そこに行って助けてやれ!〉
「ちょ、待ってよ限外さん!」私は慌てて言う。「私、まだ記憶も戻ってないの!どうやって戦ったらいいかも忘れてるのに、どうやって戦えって…」
〈思い出せ。いいか。写真をゆっくり見て、隊服も見るんだ。深呼吸して、思い出の引き出しをゆっくり探れ。〉
言われた通りにやってみる。
まず、写真を見つめてみた。そして深呼吸をする。
それにしてもチャイナ服の女の子が可愛い。目がくりくりしている。総悟もいる。土方
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