ターン41 鉄砲水と流離の浮雲
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そんなことを考えながら扉を開けると、たまたま歩いていた留学生……アモン・ガラムの後姿が見えた。せっかくなので挨拶程度はと声をかけようとしたら、チャクチャルさんが割り込んできた。
『ストップマスター、この男だ。先ほどから部屋の前をうろうろして、マスターの話を盗み聞いていた』
「(気づいてたんなら教えてよ……)」
『余計なことに気を使わせることもないと思ってな。あの時は情報収集に集中してほしかった』
そうやって話しているうちに、こちらの様子に気づくことなくアモンがどこかへ歩いていった。チャクチャルさんからそうと教えてもらってなかったら、ついさっきまで盗み聞きをしていたなんてわからないほど堂々とした態度だ。
それにしても、盗み聞きか。こうなるとアモンもアモンでなんか怪しいから、今日はこっちを追いかけてみようかな。
「鬼が出るか蛇が出るか、尾行と洒落込ませてもらいますかね、っと」
できる限り足音と気配を殺しながらそっと後ろにつき、見失わないようこっそりとアモンの背中を見ながら追いかける。しばらくそうしているうちになぜか学校を離れて森の中に入っていったが、どうやら適当に散歩しているわけでもないらしいことはすぐにわかった。明らかにアモンには何か目的地があって、迷いなくそこに向かっている。
さらに歩き続けるうちに、遠くからかすかに十代たちの声が聞こえてきた。ふむ、怪電波の探知をしてるジムと同じような場所に迷いなく向かっているアモン……いよいよもって怪しい。するとその声が向こうにも聞こえたのか、いきなり前を歩くアモンが全力で走り出した。
「しまっ……!もう、なんだってのさ!」
声を殺して毒づき、木の枝などを踏んで音を立てないよう気を付けながら僕もその方向に走る。木の間を通り、足元の小石を乗り越えて。
「あらー……や、やっほー」
「やあ。こんなところで奇遇だね」
こちらを真っ直ぐ見据えて仁王立ちするアモンと目が合った。いつからかは知らないが、完全に尾行がばれていたらしい。一見にこやかに見えるアモンだが、その目は全く笑っていない。
「少々時間がないから単刀直入に聞かせてもらうが、一体なぜ追いかけてきたのか、教えてもらおうか」
「えっと……」
どうするのが一番いいだろう。まず1つ目の選択肢としては、包み隠さず正直に話すこと。これはアモンがこの電波の件を何らかの理由から追いかけているのであれば、単純にお互いの味方が増えることになるというメリットがある。ただしこの選択は、もしもアモンがこの電波の原因である場合は彼と敵対するきっかけを自分から作り出すことになってしまい、僕の身に……いや、下手をすると十代たちにまで危険が及ぶ可能性がある。もう1つはまあ、しらばっくれるなり逃げるなり。だけどそんなもんが
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