巻ノ二十八 屋敷その十二
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「ご嫡男の正純殿はお父上以上というがしかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「正純殿の評判は悪い」
昌幸は眉を顰めさせてだ、彼のことを話した。
「非常にな」
「そこまで、ですか」
「あの方は評判が悪いのですか」
「お父上も評判が悪いが」
本多正信自身もというのだ。
「徳川家の家中ではな」
「徳川家は武辺の家だからですな」
信之は何故本多の評判が悪いか言った。
「それで」
「謀を嫌う家じゃ」
「元々は」
「それ故本多殿は嫌われておるが」
「正純殿はさらにですか」
「傲岸不遜で目的の為には手段を全く選ばぬ方という」
そうした性格だからというのだ、正純が。
「だからな」
「お父上以上にですか」
「忌み嫌われておるという」
「そうなのですか」
「しかし切れる」
頭がというのだ。
「あのお二人に他に一人か二人備われば」
「その時は」
「徳川家は天下人になれるやもな」
これが昌幸の見立てだった。
「謀も備わってな」
「そのうえで」
「あの家もですか」
「そうも思う、ではな」
ここまで話してだ、そしてだった。
昌幸は二人の息子達を軸として政を行い戦の用意も進めていた。来たるべき時に備えて。
巻ノ二十八 完
2015・10・16
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