第3章 黄昏のノクターン 2022/12
34話 造り物の心
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の柄に手を乗せつつ、底冷えする声で再び命令を繰り返す。要するに最後通牒である。
「ひぃッ!? よ、喜んでェーーッ!?」
コルネリオの殺気に中てられ、若干涙目になりながら街路を南へと疾走。そのまま行き交うゴンドラを飛び石代わりに水路を跳ね超え………ようとした矢先に一人の船頭が運悪く水路に転落。アドルフォはそのままゴンドラを拝借して市場へと去っていった。さも当たり前のように白昼堂々繰り広げられたゴンドラジャックの一部始終に困惑しつつ、コルネリオは愉快そうに低い声で小さく笑う。
「全く、いつ見ても飽きないものだ」
「可哀想でならないぞ………」
アドルフォと船頭は気の毒に思えて仕方がない。
「安心してくれ。あとで手当を付けておくさ………それと、今度は君の友人に礼でもせねばなるまい。全てが終わったら、行き付けのレストランにでも招待しよう。もちろん、君達全員もね」
「いや、あの船頭………もういいや………そうだな、ありがたい。だったら尚更死ねないな」
「ああ、そうだとも。死んだらつまらない」
まさか情報代がマフィアのボスとの食事会ともなっているとは、さしもの鼠も思うまい。
ともあれ、これでフォールンエルフが使用する状態異常に対して友好的NPCが対抗策を持ったことになる。毒や麻痺によるディスアドバンテージを克服する。たかが数個のポーションを準備しておくだけで、死を免れることなど、この浮遊城に於いてはプレイヤーの多くが経験したことだろう。ティルネルにはこれからコルネリオを初めとした全員分のポーションを作成してもらうのだが、一先ずは薬師の誉れとしてもらおう。死にはしない筈だ。
………と、ティルネルに内心で合掌していると、コルネリオはふと思い出したようにトレンチコートの内ポケットに手を差し込んだ。
「まだ読んでいないのならば、これはやはり返すとしよう。君の友達との秘密にしようと思ったのだが、それでは勿体ない」
仕舞ったばかりの羊皮紙を懐から抜き出し、手渡してくる。
それを受け取ると、コルネリオは愉快そうに笑いながら低い声で語る。
「最後の一文を読んでみるといい。中々に傑作だぞ」
意味が分からず、言われるままに一番後ろのページの最後の行に目を通す。
そこに記されていたアルゴの憎い心遣いに、思わず左の目尻が引き攣った。
【P.S. このくらいはむしろ一般常識だぞ。もう一度勉強し直せよ】
追伸に記された、無慈悲な一言はコルネリオにとってどう映ったのだろうか。少なくとも悪いようには認識されなかったのだろうが、それとは裏腹に、俺はより強くアルゴに対して心に刻んだのだ。
――――やはり、相容
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