第3章 黄昏のノクターン 2022/12
34話 造り物の心
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ば、ティルネルに聞くまではそれ以外のエルフの派閥である《フォールンエルフ》という存在を知らなかったくらいである。
情報がない。ならば手に入れればいいだけのこと。餅は餅屋。情報は鼠と自分の中で固まりつつある不変の真理を信じつつ、祈る思いで待ち侘びると、一分と待たずに鼠から返信が送られる。
開いたままのメールウインドウで文面を確認すると、フォールンエルフに関する情報――――戦闘における使用武器やアイテムといった情報のみに限定した――――が詳細に書き連ねられた、ともすれば【プチ攻略本】とも言えてしまうような代物が視界に羅列される。
「全部終わったら、あとでトッピング全部乗せのピザでも奢ってやる」
思わず口を突いて出た感謝の言葉も、まともに耳にしたのはティルネルくらいのものか。そんな些事はさておき、メールで届いた文面を手持ちの羊皮紙にコピーしつつ、コルネリオの許へと足早に移動する。《NPCという無機質な存在》ではあるが、賢明な彼の事だ。或いは、何かしらのギミックのトリガーとなるかも知れない。少なくとも今はマフィアの元締の理解力に賭けるしか他はない。
「――――では、その手筈で頼む」
「畏まりました」
まさに取り込みの話が終え、側近の二人が場を離れたところに滑り込む。
殊に表情を変化させるでもないコルネリオは、しかし事態を認識したかのように場を離れることなく待機する。或いは、そう見えただけかも知れないが。
「コルネリオ、これを見てくれ」
「………これは、どこで手に入れた?」
呼び捨てにされた事など気にすることもなく、受け取った羊皮紙に記載された文面に目を通すコルネリオは、返って怪訝な表情を見せる。一端とはいえ、敵の内情について記された文書を突然見せられれば嫌疑も掛けられそうなものだが、今はそれどころではない。
「知り合いに腕の良い情報屋がいるだけだ。俺も文面を少しだけ見たが、あいつらは煙幕や閃光弾で目晦ましをしてくる。加えて麻痺毒や熱毒を塗った武器を使うらしい。準備だけはしておいてくれないか?」
俺からの具申に対して、返答はない。
ただいつも通り、淡々と文面に目を通していくだけ。読み終えたコルネリオは書類を折りたたみ、懐に仕舞い込む。しかし、今更になって出過ぎた行動だとやや後悔する。モンスターの手の内を予め予期出来るのはベータテスターの特権であるが、それはプレイヤー間の常識であって、このSAO内に設置されているNPCには埒外の理屈となる。常識的に考えて、超越的な手段で得た情報を鵜呑みにされることは先ず在り得ない。それこそ敵の内通者と取られても文句の言えない状況を自ら作り出したことになる。
今にも斬り掛かりそうな鋭い視線を横目から向けてくるコルネリオはゆっくり
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