第3章 黄昏のノクターン 2022/12
34話 造り物の心
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疲れてきた。余分なところから削ぎ落して、少しずつ軽くするというのはどうだろうか?」
「頼む、待ってくれ!?」
「それは君の気持ち次第だ。先ずは左耳から………」
「取引先の、エルフ共のアジトに案内する!!? あいつらだって、ロービアで取引をしてたのに話を通さなかっただろう! お、俺達だけが悪者じゃあねえ筈だ!?」
最後の一言、まさしく俺達が求めていた条件に見合った発言で、頬を撫でながらゆっくり降下していた《朔》の切っ先が半ばで停止する。強いて確認するならば、左耳は健在というところか。これには一安心である。
「ふむ、となると君は、フォールンエルフのアジトまで我々を送り届けてくれると、そう申し出てくれているのだね?」
「ああ、そうだともクソッタレ!」
「では、早急に準備に取り掛かってくれたまえ。木箱を搬入していた大型船一隻で十分だ。それと、申告してくれた未納金の支払いも遅滞なく頼むよ。利息が少々値の張るものでね」
余分に幾つか話を取り付けたコルネリオは、男をバルコニーの床に放り捨てた後に何か言葉を交わしてから階段を降りてこちらへと歩み寄る。あれだけの戦闘を繰り広げながらも、拵えの良いベストとトレンチコートに乱れはなく、ハンカチで左手を拭き取りつつ放り捨てると、沈黙を破って語り出した。
「私に任せて正解だっただろう?」
「全く、見事なお手前で」
「お褒めに与り光栄だ。さて、船の手配は整った。彼等には我々のセーフハウスまで船を運ぶよう伝えてあるから、部下と合流するとしよう」
つまり、アジトに戻るということだろうか。
ここに残っても、対して得られるモノは見受けられないので、コルネリオと共に水運ギルド本部を後にする。
帰り道の運河で擦れ違う船頭は、果たして本部の有り様を知った時にどのような心境となるのか気掛かりではあるものの、彼等とてフォールンエルフとの密貿易に少なからず加担していると見て良いだろう。恐らく、どの船頭の船に乗って作業場の空箱について問うても、「答えられない」という台詞を使い、躱されていたと容易に想像できる。知らぬ存ぜぬで受け流された方が関係性を疑わなかっただろうに。犠牲者や被害者としては括られることはないだろう。
………などと、横道に思考が逸れながらもゴンドラは恙なく運河を渡り、もう幾度も立ち寄ったコルネリオのアジトの前にて接岸。
出発前のコルネリオと側近との会話通り、黒服に身を包んだコルネリオの部下が水路に沿って並び、一糸乱れることなく待機していた。加えて、木箱を輸送していた大型のゴンドラも停泊されている。船頭は昨日に引き続き、フォールンエルフの許まで木箱を輸送していた男が抜擢されたようだ。自分の立場を理解してか、膝が竦んでいる姿には憐憫の情さえ覚えてしまう。
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