暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
災を堕とす者達
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アレは、ただの赤ん坊。

醜くて、意地汚く、親に置いて行かれて泣き喚く、ただの赤ん坊。

スッと音もなく目を細める狙撃手の少女に、傍らで一心不乱に工具と部品の山と向かい合うリラが唐突に言った。

「……悪かったわね」

「何が?」

「その……巻き込んだり、とかして」

「…………………」

いつも出会いがしらに突っかかってくる双子の片割れの言葉を、数秒かけてシノンは呑み込んだ。その上で淡い笑みを口元に浮かべる。

「別に」

素っ気ない返事の後、シノンは口をつぐみ、手のひらを肩に担ぐ鋼鉄の円筒――――《吸血鬼(RPG29)》の発射機外装に沿えた。

暗視照準器の先では、目的すらも見失った純白の巨人が景色を塗り替えている。

ゴウ!!という音とともに、二人の直上数メートルの上空を欠片というには巨大すぎる岩塊が通過し、地面を数回抉りながらバウンドして森林エリアの端で止まった。

だがその脅威を目にしてもほとんどブレない心臓の動悸に感謝しながら、シノンは烈風で僅かに動いた照準器中の十字線(レティクル)を調整する。

距離と風向き、標的の体幹を考慮して細かく動かしていく。GGOプレイヤーならばこれくらいの計算は常に行えるものだが、それでも一撃決殺を求められる狙撃手の右に出る者は少ないだろう。

二人は、シノンの能力を信じてくれた。

普段は突っかかって、一方的にひがんでいる彼女達も、シノンの狙撃手としての腕だけは買っているということだ。

―――なら信じよう。

少女は静かに、リラの作業が完了するのを待つ。

―――彼女達が信じた私を……信じよう。

きっとそれは、《シノン》であると同時に、《朝田詩乃》でもあるのだから。









「え……反物質?」

「う、うん。そう」

轟然と振り下ろされた足裏の合間を走り抜けながら、レンは追走するミナの言葉に首を傾げる。

「反物質って……えーと……」

「《セントライア》――――あのでっかい船に乗ってた《対消滅爆弾》の核みたいなものだよ」

「あれ?でもそれって確か、爆弾ごと取り上げられなかったっけ?船から脱出した後に」

もう遠い昔のようにも思えるが、時間的にはつい昨日のことだ。

豪華客船を丸々一隻を舞台にした大規模クエスト(というのは建前で実際にはセコい強奪クエだったのだが)をクリアしたレン達は、件のクリアアイテムである鉄製卵――――にしか見えない超強力な爆弾を港で待っていた黒服に半ば強制的に徴収されたはずだ。

当然、その際に中身の反物質とやらも渡されたはずなので、ここにあるのはおかしい。

ハテナマークを掲げる少年に、気弱な少女はつっかえながらも言う。

「え、えーと…
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