十八話:救いは諦めぬ者に
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物の強さではない。
彼が手に入れた強さとは死に急ぐ中で敵の死をさらに加速する手段でしかなかった。
真の強さとは決して諦めないこと。
どんな窮地にもそれを打開する策を見出し実行できること。
自らの滅びの果てまで達成の意思を継承すること。
それこそが真に強靭なる魂の力だ。
そういう意味では不屈の少女のような底抜けな愚か者こそが真に強い者なのだろう。
そんなことを考えているといつの間にかアインスからの念話が途切れていた。
しかしながら、切嗣にはやはりそれを気に留める余裕がない。
生きている人間を探すということ以外に目を向けず、それだけを貫いていた。
そういった意味では今この瞬間だけは切嗣もまた、高町なのはのような愚か者であった。
何度、目の前で人が死ぬ光景を見ても、伸ばした手が決して届かなくても。
彼は歩いている。魂を失ったような顔をしながらも生存者を探すことを止めない。
他のことには一切目をくれずにがむしゃらに走り続ける愚か者。
神は残酷だ。だが、同時に―――そんな愚か者を愛し、尊ぶ。
「…いよ……いたいよぅ……」
声が聞こえた。小さな声だった。だが、確かに生きた人間の声だった。
彼は駆け出した。まるで、韋駄天の如く駆けた。
どこからそんな力が出るのかと疑いたくなるほどの力強さで走る。
決してその小さな命の灯を絶やさないように。
彼はただ真っすぐに走り続ける。
そして、見つけた。炎の中で傷つき涙を流す一人の少女を見つけた。
「おとうさん……おねえちゃん……かえりたいよぉ……」
家族を呼び嗚咽を零す、かよわい小さな命。衛宮切嗣が真に救いたいと願う人間だ。
そんな少女にさらなる悲劇が襲い掛かる。
空港のモニュメントである女神像がコンクリート中に含まれる水分の熱膨張により、音を立てて崩れ落ち始めたのだ。
不幸なことにその軌道は少女の真上。傷つき、涙を流す少女では避けることは叶わない。
ならば、どうするか。このまま指をくわえて新たな犠牲者を出すのか?
否、そんなことなどさせない。
例え、この先何度も少女のような弱者を見捨てるのだとしても今この瞬間だけは救う。
幸運なことに今この場では誰かを救うことだけが犠牲を減らす唯一の道。
大であろうと小であろうと救わなければ犠牲は減らない。
故に今までの犠牲者への裏切りとはならない。
もっとも、その為に狂気の科学者はこの状況を創り出したのであろうが。
今はそんなことを考えている場合ではない。
どうすれば少女を救えるのかだけを考える。
今から、バインドで女神像を支える。却下だ。
バインドに関してはそこまでの熟練度の高さは持ち合わせていない。
何よ
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