5部分:第五章
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」
「それはわかりますが」
従者達は彼の言葉に答える。しかしそこには疑念もあった。
「しかし」
「どうして蛇がそこに」
「寝ているのか聞きたいのだな」
太子はその言葉を受けて従者達に問い返した。見れば彼等はいかにもそうした顔を見せていた。
「そうです」
「どうしてでしょうか」
「考えてもみよ」
ここで彼は言うのであった。
「考える、ですか」
「そうだ。蛇は何時出るか」
彼はまた問う。
「夏か、それとも冬か」
「夏です」
その答えは決まっていた。それ以外にはなかった。
「冬には出ません」
「何故ならそれは」
「寒さに弱いからだな」
「その通りです」
「それでは」
ここで彼等はようやく気付くのであった。太子にとっては遅まきながらであるが。
「その氷だ」
「その通りだ」
太子は彼等のその問いに不敵に笑って答えるのであった。その笑みには絶対の自信さえ浮かんでいた。
「わかるな。それに塩もかけた」
「塩もですか」
「そうすれば余計に寒くなる」
彼はこうも述べた。
「だからこそさ」
「それではやはり」
「寒さは」
「そうだ、蛇に対してだ」
ようやくといった感じであった。手の内を全て見せたのであった。
「これはな」
「左様でしたか」
「だからこそ塩まで」
「その寒さで蛇を眠らせた」
蛇を見ながらの言葉であった。冷徹でありながらも実に学問的な、そうした響きの言葉であった。
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