Side Story
無限不調和なカンタータ 5
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聴けば元気になれる……」
「んー。たとえば、こういう歌?」
息を吸い込んだカールの唇が、またしても弾むように次々と形を変える。
「お日様が、顔を出し、今日も朝がやって来た
鳥が鳴き、犬が吠え、にぎやかな時間の始まりだ」
子供向けっていうより、どことなく笑い話っぽい、剽軽な韻律ね。
おどけた芸人を連想させる感じ。
楽師にも、明、暗、軽、荘厳、その他と、それぞれお家芸的な曲調系統がある筈なのに、これだけ節操なくいろんな歌を取り入れてるっていったい、どんだけの人数に師事したのかしら。
そして、それと同じ数だけ見限られてきたこいつって……
いや、今更それは言うまい。
「そう。あの子はそういう頭が悪そうな歌を好んで口にした。生物の日常に調子を付けただけで、何の教養にもならない内容を。飽きもせずに、何度も何度も、笑いながら……」
声色が微っ妙ーに明るくなった女神の顔を見上げれば。
涙をぼろぼろ落としつつも、口端が上向いた曲線を浮かべてる。
泣き笑いってやつか。高慢が基本の神にしては、珍しい表情だこと。
「そう。本当にこの世界が好きだったんだね、親友さん。こういう歌はね、見過ごしてしまいがちな小さな喜びを忘れないようにって継がれてるんだ。
水があって、花が咲いて、光に包まれてる。僕達は、そんな温かい場所に愛され、護られながら生きてる。だから、いつもどんな時でも、あなた達は孤独ではないんだよって、今と未来を生きてる皆に伝えてるの」
へぇええ。
そりゃまた、ずいぶんと独善的な理由ね。
実際はどんな種族も、各々の主観と都合で生きてるだけよ?
水が湧くのも花が咲くのも、断じて人間の為なんかじゃない。
「ふ……バカバカしいほどあの子に相応しいな。あの子もよく、似た言葉を紡いでいた。世界は常に循環し、それによって存在を未来へと繋げている。だからこそ美しく貴く、愛しいのだと」
「うん。神様ってあんまり世界に関わりたくなさそうな印象があったから、そういう話を聴くと嬉しくなるよ。……あ、そうだ。親友さんと君の名前、尋いても良いかな?」
「あの子はメレテー、私はアオイデーだ」
「僕はカール。彼女はグリディナさん。えっと、それじゃアオイデーさん。このままだといろいろ大変なので、とりあえず降りてから話しませんか?」
「大変?」
何が? と、ボケ顔のアオイデーとやらには、既に殺気が無い。
カールはわずかにも崩さない笑顔で頷き、とにかく下へと地面を指す。
「……………………。」
……ええ。
まあ、よくやったわ。
正直、神を殺すのは簡単だし、話なんか無視でそうしても良かったのよ。
ただ、神々の仲間意識ってヤツは、どうにも意味不明で
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