暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 5
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないよね? でも君は今までずっとここで生き続けてた。それって、親友さんには君を殺したり傷付けるつもりが無かった、っていう何よりの証明になるんじゃない?」

 静止した女神と私の影が、空中で重なる。
 雪色の濡れた瞳が、私の肩越しにカールの笑顔をくっきりと映し出した。

「なら、生かされている君の命は、親友さんのものだよ。親友さんの願いを受け継げるのは君しかいないのに、肝心の君がそんなふうに泣いて苦しんで塞ぎ込んで……大切な人を更に悲しませてどうするの? それとも、それが親友さんの望みだった?」
「違う!! あの子は誰も……誰の苦痛も、望んでなど……!」

 至近距離で叫ばないでよ、鬱陶しい!
 取っ捕まえたこの右腕、ぶっ千切るわよ!?

「だが、私が殺したんだ! 純粋無垢なあの子を……私が……この手で! 強引に奪い取ったものを、どうして笑顔で引き継げると思うのか!」
「仕方ないよ。だって、神々は親友さんの願いを否定したんでしょう? だったらせめて、最後に直接会った親しい仲の君が受け入れるべきなんだ。良い意味でも悪い意味でも、親友さんには君しかいないんだから」
「へ?」
「────!」

 こいつ今、何気に『殺した親友さんの代わりに笑いながら、もっともっと自身の呵責(かしゃく)に苦しめ』って、そう言った?

 整った可愛い顔が色を失くして硬直するのは小気味良いけど。
 ぽやぽやなカールから出て来た言葉にしては、妙に辛辣(しんらつ)ね。
 女神が伸ばした右腕に脇を引っ掛けた状態のまま、首を少し回して背後を確認してみる。そこにあるのは、少しも変わってないカールの笑顔。
 まさか、自覚してない?
 だとしたら、それはそれで率直かつ厳しい意見ってことになるんじゃ……

「…………ふぅーん?」

 面白い。
 投げやりだった思考が、ちゃんと自意識を持ち始めてるのね。
 良いわよ。どんどん成長しなさい、カール。
 歌えなくなるまでは、しっかり見届けてあげるから。

「ねぇ、親友さんはどんなものが好きだったの?」
「…………」

 にこにこしながら首を傾げて問うカール。
 視線を落とした女神は、重苦しい沈黙を返す……かと思えば

「っんなあ!?」

 いきなり腕を下ろしやがった!

 咄嗟に女神の手首を掴み直して、ぶら下がったけど……
 びっくりするじゃない!
 悪魔は浮遊できないのよ!?
 自分の意思で()()()のと()()()のとじゃ、着地姿勢が変わるんだから!
 突然はやめてよね!

「……あの子は、何でも好きだ。嫌いなものなんて、探すほうが難しい」
「そっかぁ。じゃあ、歌は? 特にどんな曲調が好きだった?」
「……明るくて、一節
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ