Side Story
無限不調和なカンタータ 5
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ないよね? でも君は今までずっとここで生き続けてた。それって、親友さんには君を殺したり傷付けるつもりが無かった、っていう何よりの証明になるんじゃない?」
静止した女神と私の影が、空中で重なる。
雪色の濡れた瞳が、私の肩越しにカールの笑顔をくっきりと映し出した。
「なら、生かされている君の命は、親友さんのものだよ。親友さんの願いを受け継げるのは君しかいないのに、肝心の君がそんなふうに泣いて苦しんで塞ぎ込んで……大切な人を更に悲しませてどうするの? それとも、それが親友さんの望みだった?」
「違う!! あの子は誰も……誰の苦痛も、望んでなど……!」
至近距離で叫ばないでよ、鬱陶しい!
取っ捕まえたこの右腕、ぶっ千切るわよ!?
「だが、私が殺したんだ! 純粋無垢なあの子を……私が……この手で! 強引に奪い取ったものを、どうして笑顔で引き継げると思うのか!」
「仕方ないよ。だって、神々は親友さんの願いを否定したんでしょう? だったらせめて、最後に直接会った親しい仲の君が受け入れるべきなんだ。良い意味でも悪い意味でも、親友さんには君しかいないんだから」
「へ?」
「────!」
こいつ今、何気に『殺した親友さんの代わりに笑いながら、もっともっと自身の呵責に苦しめ』って、そう言った?
整った可愛い顔が色を失くして硬直するのは小気味良いけど。
ぽやぽやなカールから出て来た言葉にしては、妙に辛辣ね。
女神が伸ばした右腕に脇を引っ掛けた状態のまま、首を少し回して背後を確認してみる。そこにあるのは、少しも変わってないカールの笑顔。
まさか、自覚してない?
だとしたら、それはそれで率直かつ厳しい意見ってことになるんじゃ……
「…………ふぅーん?」
面白い。
投げやりだった思考が、ちゃんと自意識を持ち始めてるのね。
良いわよ。どんどん成長しなさい、カール。
歌えなくなるまでは、しっかり見届けてあげるから。
「ねぇ、親友さんはどんなものが好きだったの?」
「…………」
にこにこしながら首を傾げて問うカール。
視線を落とした女神は、重苦しい沈黙を返す……かと思えば
「っんなあ!?」
いきなり腕を下ろしやがった!
咄嗟に女神の手首を掴み直して、ぶら下がったけど……
びっくりするじゃない!
悪魔は浮遊できないのよ!?
自分の意思で降りるのと落ちるのとじゃ、着地姿勢が変わるんだから!
突然はやめてよね!
「……あの子は、何でも好きだ。嫌いなものなんて、探すほうが難しい」
「そっかぁ。じゃあ、歌は? 特にどんな曲調が好きだった?」
「……明るくて、一節
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