Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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、私は思わず、あっ、と声を出した。
遥か先まで続く夕焼け空、その中に、円錐形の先端を切り落としたような形状の、鈍色の物体が浮いていた。いくつもの層が積み重なって形を成しているそれは、よく見ていると、下の方から無数の瓦礫となって崩れ、その下の闇の渦へと吸い込まれていくところだった。
「アレは……アインクラッド、か?」
「……ん。多分、そうだと思う」
一護と共に、私は崩れゆく鋼鉄の城を眺めた。
この二年間、私たちが囚われていた、牢獄のような浮遊城。その死に行く姿を見ていると、何故か歓喜以外の複雑な感情がこみ上げてくる。あそこにいたことで失ったものも多いけど、得たものもある。それ故の、感傷なんだろうか。
「……にしても、ここは何なんだよ。俺が勝ったんだし、アインクラッドはああやって壊れてるし、とっとと現実に帰れるんじゃねえのかよ」
「その処理は、今行っているところだ。現在、SAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去作業を行っている。あと十分でこの世界の全てが崩壊する。今はその終焉までの猶予時間だ」
少し離れたところから、声が聞こえた。一護のものではない、男の声だ。
見ると、そこには二十代後半とおぼしき白衣姿の男性が立っていた。線の細い、鋭角的な顔立ちは、かつて血盟騎士団を率いたあの紅の騎士に、よく似ていた。
「……茅場、晶彦」
一護が静かに、その男の名を呼んだ。
茅場は私たちをちらりと見やると、崩壊するアインクラッドへと視線を戻した。相変わらずその表情からは感情が読めず、自分の創り上げた世界の最後を看取る感傷や悲哀の色は、微塵も見えなかった。
と、不意に一護が動き出した。黒い襟なしコートの裾を翻し、ズンズンと大股で茅場へと近づいていく。
そして、佇む白衣の男の胸倉を掴むなり、
「ォラァッ!!」
拳骨を顔面に叩き込んだ。ゴンッ!! という鈍い音が響き、茅場の痩身が前に傾ぐ。
私も一護に習い、すたすたと茅場に接近する。途中、すれ違う一護とバトンタッチするかのようにパチンッ、と掌を打ち合わせ、それから拳を作って、
「セイッ!!」
前傾していた茅場の顔面目掛けて、渾身のアッパーを叩き込んだ。
無抵抗の茅場は私の殴打の勢いのままのけぞり、そのまま仰向けに倒れ込んだ。現実だったら確実に鼻っ柱がへし折れ、鼻血が噴出しているところだろう。最も、この男のしでかしたことに比べたら、顔面粉砕骨折でも物足りないところではあるけど。
「……現実に帰るのと順序が逆になっちまったが」
「うん。とりあえず、悲願の目標達成」
一護と顔を見合わせ、互いに頷く。この場でちゃんと痛覚が働いてれば言うことなしだったんだけど、その分は現実に戻ったら、裁判官がち
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