Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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ムが崩れた。
盾が一拍遅れた、その半瞬を逃さねえように。
「何千の命を背負った俺が、テメエ一人に――」
俺は刀を閃かせて盾を弾き飛ばし、返す刃で、
「敗ける訳にはいかねえんだよ!! 茅場晶彦!!」
茅場の身体を、斬り裂いた。
◆
<Lina>
一護がヒースクリフを、いや、茅場を斬った。
その瞬間、視界が真っ白に染まり、気が付くと、私はあの薄暗い広間ではなく、燃えるような夕焼け空の中に立っていた。
足元は透明な水晶のような板。それは何にも支えられることなく宙に浮いていて、かつて六十一層で散々練習した時に感じた、浮遊感と安定感の両立したような、不思議な感覚をもたらしている。遠くには無数の雲がたなびき、時折吹く風に押されるように、ゆっくりと流れていく。
辺り一面は彼方に沈む太陽の閃光で焼き尽くされたかのように、赤く、朱く、紅い。上を見上げれば、そこは赤というよりも夜の闇と昼の太陽が混じったような紫色で、そこから流れるように暖色へとグラデーションが続いていく。
「……あ」
その中程にあったオレンジ色を見つけ、私は小さく声を漏らした。まるで彼の髪のような、派手で、優しい、橙の色。
その美しさに思わず見とれていると、
「――よぉ」
不意に真横から、ぶっきらぼうな声がした。視界の端に、黒いコートが見える。
ゆっくりと、私は顔を上げた。視線の先にあったのは、この二年で見慣れた、けど、いつ見ても胸が高鳴る、端正な顔。いつものしかめっ面の中でブラウンの瞳が宝石よりもきれいに輝き、かすかに吹く風に煽られて空と同じ色の短髪が陽炎のように揺らめいていた。
「……お疲れさま。勝ったね、一護」
見事に激戦を制した大切な人へ、私は微笑みと共に労いの言葉を贈った。一護は微かに笑みを浮かべ、あぁ、とだけ返してきた。ただそれだけのやり取りで、私の心が満たされていくのが分かる。
一護の方にちゃんと身体を向け直して、私は少しからかうように言った。
「最後の方、かなり危なかった。私との約束破られるかと思って、ヒヤッとしたんだから」
「うるせえな。ちゃんと勝ったんだからいいじゃねえか」
「よくない。あんな無茶苦茶な迎撃して……私の心臓に多大な負荷をかけた責任、ちゃんと取ってもらうから」
「なんか理不尽じゃねえか? それ。ああしなきゃ防げなかったんだから、しょうがねえだろ」
ムスッとした表情で一護が返す。ちょっと拗ねたようなその顔を見ていると、また笑みがこみ上げてくる。この人のおかげで、私は何度こうして笑えたんだろう。現実世界では表情を変えることなんて、滅多になかったのにな。
感慨にふけりながらふと下方を見たとき
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