Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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。
それら全部を押し殺し、平静を保っているように俺には感じられた。揺らぐ内心を制し、俺に余計な負担をかけまいとする気遣いさえ伝わってくる。
だから、俺はいつも通りの態度で、リーナに言葉を返した。
「リーナ、俺は大丈夫だ。必ず勝つ。勝ってこの世界から出る。そんで、憎たらしいアイツをぶん殴る。二年前、お前と交わした約束を果たせるときが、やっと来たんだ」
「……うん。分かってる。分かってるよ、一護。分かってる」
まるで自分に言い聞かせるように、リーナは「分かってる」と繰り返した。そのままそっと目を閉じ、手にした短剣を祈るように掲げる。
と、その横から一振りの剣が突き出された。
見ると、キリトが手にした直剣を俺に向けて突き付けていた。剣と同じ、真っ黒い瞳が俺を見ている。
「行けよ、一護。行ってアイツを斬ってこい。本当は俺が戦いたいとこだし、お前に任せるのはちょいと悔しいけどな」
「キリト……」
「勝ってこい、勝ってこの世界を終わらせてくれ。肩書きだけじゃない、お前が、アインクラッドにとって本当の『死神』になってくれ!!」
「……あぁ、必ず」
俺は短く答え、突き出された黒い剣に鎖坐切を重ねる。ギンッ、という澄んだ音が、湿っぽい空気を切り裂くように響き渡る。
と、その上から純白のレイピアが重ねられた。
「そうだね、こうなったらもう、貴方に任せるしかないもの。
勝ってね、一護。貴方ならきっと、ううん必ず、この世界を終わらせられるから」
「アスナ……」
「……へっ、仕方ねえ。そんじゃあいっちょ、俺もおめえの勝ちに賭けてやる。ヘマやって負けんじゃねえぞ、イチの字!!」
さらにその上に、いつもの調子に戻ったクラインの刀が合わさり、
「最後の大勝負だ。男見せろよ、一護!!」
そのまた上に、エギルの大斧が乗っかる。
それだけじゃない。
あちこちから「死ぬなよ!!」「勝ってくれ!」「負けるな、死神代行!!」という声が響く。皆が武器を天に向けて突き上げ、声を枯らさんばかりに激励を叫ぶ。
そして、最後にリーナが短剣を突きだし、キリトたちの武器に埋もれた俺の刀に、そっとぶつけた。
「……いってらっしゃい、一護。貴方が勝つって、私は、信じてるから」
そう言って、リーナは柔らかい笑みを浮かべる。さっきまでの複雑な感情は消え、今はただ、迷いなく俺を信じているのが伝わってきた。
「――あぁ。いってくる!!」
俺は堂々と言葉を返し、音高く刀を引き抜いた、ギャリンッ! という甲高い金属音が、俺の心の芯まで響く。
コートの裾を翻し、後ろを振り返ることなく、俺は真っ直ぐに茅場の待つ広場の中央へと歩いていった。感情の読めない顔付きで俺たちを見ていた奴
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