Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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なところも、大好きだよ。
「……おい、リーナ。身体が……」
一護が少し驚いたような声を上げる。言われてみると、一護の身体が少しずつ白み、背景の夕日を透過し始めていた。見下ろした自分の肉体も、同じように色を失っていく。
さらに下方では、いつのまにか大部分が崩壊したアインクラッドの頂上が、今まさに崩壊しようとしていた。茅場の言っていた紅玉宮らしき真紅の神殿が、文字通り数多の紅玉となって、砕け落ちてゆく。
それらをしばし見つめた後、私は一護の方を向いた。
「そろそろ時間、なのかもね」
「ああ。そうみてえだな」
自ら彼の手を放し、私は一護の正面に立つ。夕日で透き通り、逆光に照らされた一護の姿は、幻想的で、すごくきれいだった。
……ねえ、一護。
私ね、今、少しだけ寂しいよ。
あんなに帰りたかった現実に戻れるのに、今いるこの世界が、貴方と二人きりのこの場所が終わってしまうことが、ちょっとだけ惜しいんだ。
現実に戻ったら、貴方をこうして独占できる時間なんて、あんまり取れないだろうから。
だから、今のこの時間が、一秒でも長く続けばいいのに。なんて、心の片隅で思ってしまっている。
けど、それじゃいけないよね。
私は決めたのだから。
現実に生きて帰るって。
帰ってまた貴方と出会って、仲良くなって、そしていつか必ず、想いを告げるんだって。そう決めたのだから。
「……最後に一つだけ、お願いしていい?」
「なんだ」
「私のこと、名前で呼んでほしいな。リーナじゃなくて、私の、本当の名前で」
忘れたなんて言ったら、承知しないんだから。
そう付け加えると、一護は、ンなわけねえだろ、と言い返し、ニッと笑って見せた。
「相棒の名前くらい、ちゃんと覚えてるに決まってんだろ」
「八ビット脳みそのくせに?」
「うるせえよ。……そんじゃあな、東伏見莉那。また向こうで会おうぜ」
その言葉に、胸が高鳴る。二年前のあの夕方から凍っていた私の現実の時間が、ゆっくりと、進みだしたように感じた。
溢れる涙をこらえつつ、歪む視界に彼を映して、
「……うん。またね、黒崎一護。この世界で貴方と会えて、本当によかった。必ず現実で、また会おうね……っ!」
私は心の底から笑顔を浮かべ、しばしの別れを告げた。
この世界で一番長く一緒にいて、一番信頼して、そして私の人生で一番愛した、大好きな彼に。
身体が世界に溶けていく。
視界は既に白一色。もう、彼の姿は見えない。
けれど、まだ彼の声が、温もりが残っている。
彼の名残が、まだ私の心に在る。
だから、もう、寂しくなんてない。
また現実世界
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