Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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この世界の法則の中でも外でも、私は君に完敗した。完敗できた。それだけで、意味はあったのだよ」
そう言うと、茅場はもう何も言うことは無いというかのように瞼を閉じた。一護はそれを見て再び怒りに両肩を震わせていたが、再度問いを投げることも、茅場の答えに反発することもせず、白衣の男の身体を乱暴に投げ捨てた。そのまま膝を付き、うなだれたまま動かなくなる。
私も、なにを言っていいのかわからず、その場に立ちつくした。自分本位極まりない回答に対する憤りは確かに私の内側に渦巻いている。
けれど、私よりも遥かに怒り、自身の記憶を覗かれ、挙句勝手にこの世界の存在する意味に仕立てられた一護が、声を荒げることなく黙っている。それを見てしまうと、私には発すべき言葉が見つからなかった。
しばしの沈黙のあと、茅場はゆっくりと立ち上がり、私たちに背を向け、歩き出した。一護もそれを止めることなく、ただじっと俯いている。
「……一護君。一つ、私からも訊いていいだろうか」
不意に、背を向けたままの茅場がそう問いかけてきた。一護は何も言わず、沈黙を返すだけ。
それに構うことなく、茅場は自身の問いの言葉を続けて言った。
「私が見た記憶の中の君は、本当にあらゆる困難に立ち向かっていった。自身の世界観を超える存在に日常を破壊され、常人なら幾度となく道半ばに倒れているであろう心身の傷を負い、ようやく手にした力さえも時には凌駕され、大事なものを奪われる。それほどの数多の苦難に直面してもなお戦い続けられたのは、どうしてなのかな。
黒崎一護君。君は一体、何のために、戦い続けているのかな」
「…………テメエこそ、俺の記憶のドコを見てたんだよ」
そう言いつつ、一護は立ち上がり、茅場を射抜くような強い目で見た。強い意志に満ちた彼の眼は、彼方へ沈む夕日の何兆倍も、何京倍も美しく見えた。
「俺はずっと、誰かを護る力が欲しかった。テメエが見たような連中から、降りかかる理不尽な暴力から、大事な人を護れるだけの力が欲しかった。俺が初めて護りたいと願った人が、命を賭して俺を護ってくれたように。
そんな無力なガキだった俺を、たくさんの人が助けてくれた。力を与えてくれた奴、鍛えてくれた奴、弱さに気づかせてくれた奴。そいつらのおかげで、俺はここまで強くなれた。
だから、その皆を護るために、俺は戦うって決めたんだ。他でもねえ、ただ俺の、魂に誓って」
胸を張って、一護はそう言い切った。
茅場は何も言わず、少しの間そのまま立ち止まっていた。まるで一護の言葉の余韻を噛みしめるかのように、微動だにせず、ただ立ち尽くしていた。
「……そうか。ありがとう、死神代行君。
そして、言い忘れていたことをもう一つ。ゲームクリアおめでとう
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