暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 32. The End of Imagination
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ゃんと与えてくれることだろう。死刑という名の、法の鉄槌で。

 茅場は倒れたまま動かない。目を覆うように顔に載せられた腕のせいで、その表情もよく見えない。夕焼けに照らされ、ピクリとも動かず腕で表情を隠すその姿は、どこか抜け殻のように空虚だった。

「……生き残った連中は、どうなった」

 静かな怒りを孕んだ声で、一護が問う。

 対して、しばしの沈黙を経てから、茅場は答えを返してきた。

「先ほど、生き残った全プレイヤー、七一六四名のログアウトを確認した」
「死んだ奴らは?」
「彼らの意識が現実世界に戻ることはない。死者が消え去るのは、どこの世界でも一緒さ」

 ブチッ、という何かが切れる音が、聞こえたような気がした。脳内が突沸し、視界が夕焼けの色よりも赤色に煮えたぎるのが分かる。

 怒りに任せ、私が言葉をぶつける前に、一護が動いた。倒れた茅場の襟をわし掴みにして持ち上げ、思いっきり水晶の床へと叩きつけた。さっきよりも鈍い音が、際限なく続くこの空間に響き渡る。

「フザけんなよ……なにが『どこの世界でも一緒』だ!! こんな、テメエの勝手で作ったハリボテの世界で、他人の都合で閉じ込められて、現実を失って、それでも必死に生きた奴らの命を三千も奪いやがって!!」

 破れんばかりに白衣の襟を捻じり上げ、一護が茅場の上体を引きずり起こす。ここまでされても、茅場には反応らしいものは一切ない。

「今一度訊くぜ、茅場晶彦。なんでテメエはこんなことをしたんだ!! 七千人の現実と三千人の未来を奪ってまで、この世界を作って、観て、一体そこに何の意味があったんだよ!!」

 絶叫とも言えるほどの一護の言葉が、さきほどの鈍音が消えたばかりの空間に満ちる。遮るものがないためにその残響は虚空に溶けるように消え、代わりに私の鼓膜の内側にだけ浸透していった。

 やがて、茅場は今まで閉じていた口を少しだけ開き、目を覆っていた腕をどけた。無感動な視線が、激情に燃える一護のブラウンの瞳と交錯する。

「……この世界を作った意味、か。私も長い間忘れていたよ。あの鉄の城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創ることだけを欲し、そこに意味を求めることなど、とうの昔に止めてしまっていた。
 だが、君に出会い、その記憶を見せてもらったことで、私は私の世界をも超越した世界を知ることが出来た。理不尽な力に傷つき、大切なものを失い、それでも尚誰かを護るために戦いつづける君の生き様は、とてもとても美しかった。そして、同時にこうも思った。これほどの世界を生きた者ならば、いつか必ず私の世界を超えていくだろう。死神代行の名を背負い、幾多の戦いを勝ち抜いた君なら、きっと征し、私の前に立ち、そして勝つだろう、とね。
 果たして、その予想は正しかった。
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