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目をやって携帯でメールを打つ。まるで何処かに連絡を取っているように。彼は明らかにおかしかった。
その時山根と尾松はホテルの隣のビルの屋上の隅で姿を隠していた。そこからホテルの屋上を見ている。吹きすさぶ風が結構強かった。
「よし」
山根は自分の携帯も見ていた。そこにメールが届いて満足気に頷いていた。
「入れたな、これでいい」
「役者さん達は上手くいったんですね」
「ああ、これで賽は投げられた」
「いよいよですか」
「覚悟はいいな」
尾松に問う。真剣な顔と声で。
「そろそろだぞ」
「出ますか」
「そうだ、俺の予想が正しければな」
山根はホテルの向こうのビルを見据えて言う。
「来る」
「連中が」
「他の奴等はどうしている?」
「待って下さい」
尾松はそれを受けてまた自分の携帯でメールを送る。すぐにメールで返事が返って来た。
「今すぐにでも」
「そうか、じゃあいいな」
山根はまだビルを見据えている。そしてそこで何かを待っている。
「本音を言うとすぐにでも発砲したいがな」
「流石にそれは無理ですよ」
尾松は山根のその言葉に苦笑いで応えた。
「ここはオーソドックスにいかないと。後が大変ですよ」
「今までで充分オードックスじゃないがな」
「それは言わない約束で・・・・・・遂にですよ」
「ああ」
見ればマークしているビルの屋上に数人姿を現わした。そのままラブホテルへとすすす、と近付いていく。その動きはまるで影のようであった。
「速いな」
「慣れてますね、あれは」
二人はその動きを見ていた。それは確かに慣れたものであった。
「やっぱり。これまでのも連中の仕業みたいですね」
「絶対にな。じゃあこっちもこっちでやる」
「はい」
「次のメールだ」
「了解」
尾松はまた携帯でメールを送る。その間にビルの屋上に姿を現わした男女はそこから何とホテルの中に入って行く。見れば通風孔から入って行く。
「多分あの真下にあの部屋ですね」
「そうだろうな。全員入ったな」
「はい、今」
「よし、今だ」
山根は動いた。尾松はそれに続く。するとそれと同時に四方八方から何人も私服や制服の警官達が姿を現わした。山根が満を持してあちこちに伏せさせていたのである。
彼等は警官に相応しい敏捷な動きでホテルの屋上に辿り着いた。その上で今通風孔に入って行った不審者達を待ち構えていたのであった。
「これで逃げられませんかね」
「下の出入り口も全部押さえてあるからな」
「はい、そっちも抜かりなく」
ホテルの出入り口の周りには私服の警官達が数人ずつ。ホテルは上下から完全に包囲されていた。山根はそこも考えていた
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