暁 〜小説投稿サイト〜
ホテル

[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「その団体のうちの一人の経歴見ろ」
「ええ」
「そしてだ」
 山根はここで事件が起こっているホテルの資料を出してきた。
「そこのデータも見ろ」
「こっちもですか」
「よく見ろ、そして驚くな」
 山根は念を押す。
「よくな。それでわかるな」
「ええと・・・・・・」
 尾松は宗教団体とホテルの資料、両方を見比べていく。見比べているうちに彼はあることに気付いた。
「何か苗字が一緒のがいますね」
「そこだ」
 山根の声がそこで止まった。まるで時計の針の様に。寸分違わず。
「もっとよく見てみろ」
「!?どうしたんですか?」
 あまりにも山根の言葉がいわくの様なものを含んでいるので尾松としても妙なものを感じずにはいられなかった。何か疑念を抱かずにはいられなかったのだ。
「一体」
「すぐにわかる」
「すぐにって・・・・・・!?あっ」
 資料を見比べてすぐにわかった。そのことが。
「これってまさか」
「わかったな、それだ」
 山根は尾松が驚きの声をあげたのを聞いてそう声をかけた。
「わかったな、からくりが」
「こういうことだったんですか」
「そうだ、じゃあすぐに罠を仕掛けるぞ」
「はい」
 尾松はそれに応える。
「それで罠に使う役者はどうしますか?」
「そっちは何時でも手配出来る」
「何時でもって」
「この街はな、何でもあるんだ」
 壁にかけてある上着に袖を通しながら言う。焦茶色のお世辞にも見栄えのいい上着ではなかった。だがそこに妙な趣きが感じられた。
「役者も手配先があるんだ」
「そうなんですか」
「それも今から教えてやる」
「今から」
「来い」
 顎で命じてきた。
「知りたいんだったな」
「わかりましたよ。それじゃあ」
 尾松は面白そうに笑って立ち上がった。そして彼は自分の制帽を手に取った。山根は刑事なので私服だ。だが尾松は制服なのである。
「行きますか、警部」
「御前いい刑事になるかもな」
 山根はそんな彼を見て言った。まだ正式な刑事ですらないが。
「すぐにそう答えた奴ははじめて見たぞ」
「何にでも興味を持つ方でして」
 尾松はその笑みを浮かべたまま答えた。
「時々それが仇になりますけれどね」
「じゃあ今のうちにどんどん仇になっておけ」
「また変わった言葉ですね」
「若い時の仇は後で糧になるんだ」
「だったらいいですけれどね」
「年長者が言うんだから間違いはない」
 あまり根拠がない場合もある言葉である。特にこうした不気味な事件においては。
「だから安心しろ」
「じゃあ安心します」
「それでな」
「ええ」
 話を元に戻してきた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ