9
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「これは?」
「あの団体の表向きのメンバーと資産だ」
「はあ」
「見てみろ。おかしな点はないか」
「ちょっと貸して下さい」
「ああ」
山根はそれに応えて尾松にそのファイルを手渡した。尾松はそれを受けて受けてファイルを読みはじめた。そこには色々と細かいデータが書き込まれていた。
「ふうむ」
「どう思う?」
「僅か数人の団体ですか」
「そうだ、五人のな。元々小さな団体が分裂して出来たものだからだ」
「成程」
尾松はまず人数を見た。すると山根からこうした返事が返って来たのである。
「五人ですか。本当に小さいですね」
「そうだな」
「けれどそれにしては」
尾松は資産を見ているうちに気付いていった。
「車とかクーラーとか。やけに設備がいいですね」
「そう思うか」
その言葉に反応したのか山根の目の光が鋭くなった。
「それにここのビルの部屋を借りるのって。結構しますよ」
「都心だからな」
「それも平気でやっているし」
「おかしいと思うか」
「そうですね。あからさまじゃないですかね」
尾松は考えながら述べた。言葉の調子が慎重なものとなっている。
「ここまで持ってるのって。五人位じゃ」
「資産はどれだけあると思う?」
「五千万はあるんじゃ」
「異常だな」
山根もそれに気付いていたのである。それをあえて尾松に見せてきたのだ。人数、規模と比してあまりにも資産が多いのである。
「そうですね。それで金の入り所は」
「本人達が働いているらしい。宗教活動の傍らな」
「プロテスタントは働いてお金を儲けるのっていいんですよね」
「ああ、確かな」
二人はこのことに関しては学校で習った記憶があった。だから言えたことである。ちなみにこれは正解である。その為新教は商工業者の間で広まったのである。
「だったらお金持ってる理由もわかりますけれど」
「一人当たり一千万だ。どうやって作ったと思う?」
「どうやってって」
「普通に働いてそれだけの金が手に入るか?すぐに」
「まさか」
そんな仕事はそうそうない。それは誰にでもわかることだ。
「それじゃあ」
「こいつ等が怪しいな」
「オウムとかと同じってことですか」
尾松の声にも暗いものが宿っていく。
「それじゃあ」
「それは調べてからわかる」
山根の声もまた暗くなってきていた。探る調子であった。
「わかるな、それで」
「ええ、よく」
尾松もそれに応えた。二人の声が同じ暗さになった。丁度同じ暗さにである。
「仕掛けるぞ」
「役者はどうしますか?」
「二人だ」
彼はそう言って立ち上がる。
「ついでに言うとな」
「はい」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ