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殺戮を欲する少年の悲痛を謳う。
9話 鉄と鉛の創傷(ウーンド)
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。同情と似たような行為だ。口ぶりから、マシロが他界していることを知っていた。
「ああ。好きだった。今でも好きだ。時より話すよ」
 クロノスは死んでいることを“未だ”語るつもりはなかったらしい。だが、リーナにはお見透視。むしろ哀れだと思わせるばかりだ。
「15歳…だったかな?お互いそんくらいの年齢になった頃に、飼い主の経済的事情でマシロは売りだされた。女の子だし、美人だったから…変態には高く売れたんだろう」
 クロノスは涙を浮かべる。彼女に、リーナに、マシロを投影してしまったのだ。
「マシロはある風俗店に売られた。いくらだったのだろう。知らないけど」
「…」
 リーナは深刻にクロノスを見た。
「済まない」
 クロノスは涙で顔全体を歪ませる。
「いつも。いつも私は誰かの代わり」
 リーナは独り言を呟く。
「続けて結構いいわ」
 クロノスは涙を拭い口を開く。自分で傷口を開き、それを見せるのは初めてだった。
「マシロは捨てられていたんだ。未だ幼かったんだ。体が保たなかった」
 クロノスは言葉を濁す。リーナは何を言いたかったのかわかった。
「駄目だな。俺も。リーナ、済まない。君を…」
「マシロさんをと私を混ぜて考えているのでしょ?」
 リーナはクロノスの言葉を遮って彼の頬を拭った。
「さっき言っていた、誰かの代わりって…」
 クロノスは右頬に置かれたリーナの左手を自分の左手で撫でるように触れる。
「カリヒさんには多分。幼いころに生き別れた女の子が居るのでしょう。多分外見は私と似ていません。ですが存在を私を投影しています」
「ああ。カリヒの妹だ…」
 クロノスは落ちた声で話す。
「妹でしたか…」
 リーナは緩やかな声を出したが、遮られる。クロノスは彼女の腰に左手を回し、自分の体に引き寄せて居た。
「本当に済まない。君はそれを引きずっていると言うのに。俺は君にマシロの面影を求めている」
「構わないわ」
「君の優しさに甘えて!」
「別にいいわ」
「本当に!」
 途端。彼の耳元にマシロは騒いだ。
『私はあの子じゃない!』
 クロノスは怯えた。
 死神は彼を乗っ取った。いや。正確には彼を脅した。
 クロノスは即座にリーナを体から離す。その拍子にリーナは尻もちをついた。クロノスは引き金に手を当てる。

 鉛がリーナを劈く。

「え?」
 リーナの脳内はカリヒでいっぱいだった。
 幼い頃に助けられた時。
 戦争のための訓練を受けた時。
 同じ戦場をかけた時。
 一緒に御飯を食べた時。
 いつもカリヒが隣りにいた。カリヒが居た。それだけが彼女の唯一の救いでしかなかった。
 もしも…カリヒに出会って居なければ。
 彼女は奴隷のまま死んでいた。
 生きながらえたとしても、ここまで辿りつけなかっ
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