9話 鉄と鉛の創傷(ウーンド)
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体よりも、生きて自分の足で体重を支える人間のほうが盾として長持ちして、自分の腕に負担がかからないと踏んだのだ。
そして上階にいる有利な多勢を難なく駆除する。
彼は知っていた。このビルには階段がそれぞれ一箇所しかないにもかかわらず、決まった場所にあるわけではないと。
そう。このビルは敵に物資が整った上層階を占拠されないように入り組んだ作りをしているのだ。それだけでなく、決まった武器庫があるわけでもない。
クロノスは知っている。こんな施設を防衛している連中の考え方がわかっている。それに連中よりキャリアがある。負けるはずのない戦いだったのだ。
クロノスは2階のオフィスに来た。敵はバリケードを準備し、クロノスを迎えていた。
クロノスは流れ作業で銃弾を回避し、素早く打ち返す。
脳内で自動で動くように出来ていた。戦闘中、余計なことを考える必要が無いと言って、自分のスキルを十分に利用している。
2分。本当にそれだけで十分だった。40uで、10人もいるのに、彼は2分で捨てた。
敵が弱いわけではない。しかし、クロノスからしてみれば、今回の敵は死ぬことに覚悟ができていたから、死に抵抗がなかったから楽に駆除できたと思っているだろう。
カリヒのような、生きることに貪欲な人間ほど戦い辛い敵は居ないだろう。普通、死の覚悟ができていて、何をしうるのかわからない人間のほうが怖いのに、彼は違った。
それはつまり、予測して…“考えて”行動しているということだ。
彼は戦闘中思考を捨てている。だから、何をするかわからないではなく、“起こったことを対処”すればいいと思っているのだろう。
生きることに貪欲。
背水の陣という諺がある。古来、中国から来た諺らしいが、火事場の馬鹿力や窮鼠猫を噛むと言われる、似た意味の言葉も、それを示している。追い詰められた者ほど、何をするのかわからない。
これは彼の意識のことらしいが、矛盾していることに、クロノスは気づいていない。
しかし、そうでもないかもしれない。追い詰めた敵に逆襲されるのが嫌いなのだろう。
クロノスはなんとなく。本当になんとなくだ。気づいたら4階まで来ていた。最上階が何階なのか、それもどうでも良くなっていた。
潜入してから1時間も経っていない。
彼は淡々と上を目指した。
「カリヒさん。アメリカに来てから、私達が2人きりの空間ってあまりありませんでしたね」
運転しながら、彼女は言う。
「そうだね。1回あったとしても、そこまで時間を作れなかったし。それに比べて、今回は大丈夫そうだね」
僕は窓に顔を向ける。
彼女はトラックを駐車場に止める。目的地とはまだほど遠い。
「どうしてここで止めるの?」
「キス。してください」
彼女は顔を赤くする。僕はリーナの頭に
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